俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
申し訳ないと思いながらも旭さんの強引さに負けて甘えることにした。車内はずっと重苦しい雰囲気だったけれど、旭さんは時折私のこと気にかけて話しかけてくれた。

旭さんが運転する車で会社を出て三時間半あまり。時計の針は零時を回り、次の日を迎えた頃、病院に到着し救急の出入り口で颯と合流した。

「姉ちゃん!」

「颯! お母さんの容態は?」

「命に別状はないって。過労と極度の貧血が原因だって言われたよ」

「そっか。お母さんは今どこに?」

命に別条がないと言われて少しだけ冷静さを取り戻すことができた。

「倒れてからまだ目覚めてなくて病室で寝てる。てか、そちらの方は?」

颯の視線が旭さんへと移る。

「えっと……会社の上司の方で。終電とかなくて……ここまで送ってくださったの」

「わざわざ姉のことを送っていただきありがとうございます。弟の颯と言います」

「瀬名旭と申します。お母様のご容体、落ち着いているようでよかったです」

颯に向かって軽く頭を下げる旭さんは、会社でみんなに見せる顔をしていて、実に穏やかで紳士的だった。
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