俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「諦めるよ。姉ちゃんばかり高校のときから働き詰めで。父さんが死んでから母さんが精神的にきつくなって。長野に来てからも姉ちゃんはひとり矢面に立って頑張ってて」

「颯だって大学に通いながらバイトしてお金を家にいれてくれてるじゃん」

「そういうことじゃなくて。本当なら男の俺が早く社会に出て母さんや姉ちゃんを支えて、父さんの借金を返さなくちゃいけないのに、ふたりの負担になってて……申し訳なさすぎる」

今にも泣き出しそうな颯の顔を見ていて胸が疼く。

こんな風に言わせてしまっていることが姉としては申し訳ない。

「大丈夫だから大学を辞めるなんて言わないで。借金だってもうすぐ完済できるし。颯には……そうだなぁ。出世払いってことで、医者になったら美味しい焼肉を奢ってもらうおうかな」

「姉ちゃん……」

「そういえば私、優秀だから最近昇給したの。しかもボーナスもたくさん出たし! だからそれを返済に回す余裕があるから。なにも心配いらないよ」

そんなの強がりだ。

本当は不安で押しつぶされそうだ。

でも、こんなことで負けてたまるか。

私は大切な家族を守るためならなんだってする。

いつか、三人で心から笑える日が来ると信じてるから。

だから、歩みを止めない。

辛くても、苦しくても前に進むんだ。
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