俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

そうか。

そういうことだったのか。

夏香たちの様子が気になり病室の会話に耳を傾けていたが、聞こえてきた姉弟の会話は俺が思っていた以上に重いものだった。

夏香は必死に家族を支えてきたんだ。

昔、カフェであれだけバイトをしてたのも、あの日公園で泣いていたのも、ぜんぶこういう事情があったからだったのだと悟った。

どれだけ苦しかっただろう。

生ぬるい環境で生きてきた俺には、夏香が抱える苦しみをすべて理解してやることはできないかもしれない。

それでも。

だとしても。

これからは夏香を支えてやりたい。

この十年、ずっと彼女は俺の心の中にいた。

最初はよく行くカフェでバイトをしていた彼女を何気なく観察していただけだった。

小柄で華奢で大きなくっきりとした二重の瞳が特徴的な彼女。見た目はやわらかな雰囲気を纏っているのに、話してみれば意外とサバサバしていて凛としていて、そのギャップが面白いと思った。
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