俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

その日は旭さんとの食事のことで頭がいっぱいで仕事に集中できなかった。

退勤時間のギリギリまでどうすべきか悩んだ。

無視して帰ろうと何度も思った。

だけど、旭さんのことだから次の日に普通に私の課に乗り込んできて、打ち合わせのときの発言みたいなことを本当にしてしまいそうな気がして不安でしかない。

それに……。

過去の公園での件、そして今回の母の件で旭さんに助けてもらったのは事実だ。

だから私もなにかを返すべきだと思っている自分もいたりする。

一回連絡を取って、今回限り食事に行くことにすれば……大丈夫だよね?

自分自身に何度も言い聞かせ、私は旭さんから手渡された連絡先に電話を入れた。

旭さんはまるで待ち構えていたかのようにすぐに私の電話に出た。その声は弾んでいたように思える。

会社を出て近くの駅の駐車場で旭さんと待ち合わせをしたのだけれども、旭さんの方が私よりだいぶあとに会社を出たのになぜか先に駐車場にいて、びっくりした。

旭さんは私の姿に気づくと車を降りてこっちに向かって走ってきた。
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