俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～

「お、お疲れ様です。あの……私の方がだいぶ先に会社を出たはずなのに、旭さんここに着くの早くないですか？」

「夏香の気が変わらないうちに、車に連れ込まないとって思ってな。そしたら先に着いてた」

そう言って悪戯っぽく笑い、助手席までエスコートしてくれた彼。

なんでこんなに私のためにこの人は必死になってくれるんだろう。

きっと普通の女の子なら勘違いしちゃうだろうな。

私は……勘違いなんてしないけど。

だってこれは、ただのお礼の一環にすぎないのだから。

＊＊＊

「緊張せずに食事を楽しもうぜ」

「はい……」

旭さんが連れてきてくれたのは、白銀台(しろかねだい)にあるイタリアンレストランだ。店内は数席のカウンター席とテーブル席、そして個室がふたつと、隠れ家的な落ち着いた空間になっている。

「こんなところがあるんですね」

ぐるりと辺りを見渡す。

店内にある階段を上った先にある個室。そこにはゆったりとしたソファー席があって、その横には開放的なテラスが併設されていて、特別な空間が広がっている。