俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「個室の方が人目を気にせずに食事ができると思ってさ」

「お気遣いいただいてありがとうございます」

あれだけ私が女子社員の話をしたからか、旭さんなりに気を遣ってくれたみたいだ。

しばらくしてノンアルコールのシャンパンが運ばれてきて、グラスを合わせて乾杯をした。

季節の野菜をふんだんに使ったアミューズに前菜、契約農家から仕入れている無農薬のズッキーニで作られた冷製スープ。厳選された和牛のロッシーニ。

シェフお任せの月替わりコース料理は見た目も味もとても最高だ。

これじゃあお礼の趣旨が違っているように思える。私がもてなされている側みたいだ。

それにしても旭さんはやはりかっこいいな。

料理を口にするその姿も本当に絵になる。

口を開けば俺様で振り回されてばかりだけれど、黙っていればいい男に違いないんだよね。

目の前の席に座る旭さんの様子をチラチラと窺う。

「味、どうよ?」

「すごく美味しいです! こんな素敵な料理初めて食べました」

「気に入ったみたいでよかった」

旭さんがふわりと微笑む。

最初は緊張していたものの、美味しい料理の数々にすっかり食事を楽しんでいる私は実に虫のいい人間だ。
< 37 / 150 >

この作品をシェア

pagetop