俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～

「瀬名課長、正気ですか？　ふざけてます？」

「さすがに俺だってふざけて結婚の話はしねぇよ。これは互いのための結婚。つまりは契約結婚ってやつだ」

互いのための契約結婚？

どうやらふざけてはいないようだが、契約結婚の意味が分からずに瞬きを繰り返す。

「実はおまえに悪いと思ったが、この前、病室で夏香と弟君が話しているのを聞いてたんだ。それで夏香が昔、泣いてた理由が理解できて。今も借金の返済で大変なのを知ってさ……夏香の力になりたいって思ったんだ」

真っ直ぐに向けられる瞳に耐えられなくなって、視線を下に落とす。

できれば借金のことは知られたくなかった。でも、あんなところで話していた私が悪いわけで、旭さんはなにも悪くない。

むしろ、普段すごく忙しくしている旭さんがあの日、往復六時間かけて長野までつきあってくれたことには本当に感謝しかない。