俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「この展示会の縫製担当だが、岩嶋(いわしま)縫製さんの方がいいかもしれないな」

俺の言葉に宝来がこちらを向いた。

「岩嶋縫製さんは確かに評判がいいですけど、生産性を考えればこのままの方がいいかと思うんですけど。それに現プランの会社の方が6Aクラスのシルク生地を使っていますし、プロモーションでもそこを全面に打ち出せるかと」

生産性だけを考えれば、確かに宝来が言うことも一理ある。

だが、最終的な仕上がりの観点から総合的に判断すれば、親父の代から信頼のおける岩嶋さんにお願いしたいところだ。

「生産性は確かに今のままがいいだろうが、最終製品の仕上がり面で言えば絶対的な信頼のおける岩嶋縫製さんにお願いしたいと思う。そもそも6Aという評価は、あくまでも生糸に対する評価であって、それ以外の形態の生地や絹糸、ましてや最終製品の評価のことではないんだ」

「え? 6Aってそういう意味での評価だったんですか? 知らなかったです」

「まぁ、世の中6Aのトップクラスの最高のシルク生地だの、特別仕様だの誤表示を謳っているところも多いのも事実だからな」

「じゃあ、課長の言うとおり岩嶋縫製さんに変更ってことで担当に伝えておきます」

「ああ。頼む。それから別件で頼んでいたデザイナーの選定と展示アイテムを早めに考えて企画書に添えて提出してほしい」

「分かりました。課長のもとにいるといろいろ勉強できてありがたいです。これからもいろいろ勉強させてください」

宝来が目を輝かせながら俺を見つめる。

なんでも吸収しようとする宝来を見ていると、俺にもこんなときがあったと急に懐かしくなりふと笑みが零れた。
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