俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「いろいろとご迷惑をかけてすみません」

「迷惑だなんて思ってねぇよ。むしろもっと甘えてほしいくらいだ」

旭さんがフッと笑って私の頭を優しくなでる。

「旭さん……」

「慣れない環境での生活にいろいろ無理をさせてしまったんだよな。悪かった。これからはもっと気楽にいてほしい。もっと俺に頼れよ。夫婦なんだから互いに補って支え合うのが普通だろ?」

屈託のない笑顔に心が高揚する。

いつも彼の優しさに触れていると私は錯覚してしまう。これが契約結婚だということを忘れそうになる。

旭さんは私のことを愛しているわけではない。きっと昔のよしみで私の境遇に同情してくれて手を差し伸べてくれただけ。

俺様で彼の言動に振り回されてばかりだけど、本当の旭さんは情深くて、困った人をほおっておくことができない熱くて優しい人。

私は、心のどこかでそんな旭さんとずっと一緒にいたいと思ってしまっている。

私は、きっと……。

旭さんのことが好き。

その気持ちに気づいてしまった。

すると、旭さんのことを意識してしまってまともに顔を見ることができなくなり、ついぎこちない態度を取ってしまうようになって、きっと私の異変は、旭さんに伝わってしまっているんじゃないかと思う。

とにかく今も、これからも普通にしなくちゃ。

旭さんとの関係が変にこじれないように。

そして、彼と少しでも長く一緒にいられるように。
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