俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
今日は都心にある大きな展示場ホールを貸し切って今季の新作スポーツウエアの展示会をすることになっている。

このイベントには各方面から多くの方が足を運んでくれる。新しい顧客や新規案件獲得に繋がる大切なイベントだ。

夏香も受付係として今日ここの会場にいるが、忙しそうにしているために声をかけられずにいる。それがもどかしくもあるが、今は目の前のことをきちんとこなすのが最優先だ。

SNSを屈指し、事前のプロモーションを大きく打ったこともあり客の入りは上々。受付で仕事をする夏香を横目に、バックヤードのアイテム出し確認に向かおうと歩き出したそのときだった。

「……夏香?」

男の声が聞こえてとっさにそちらを振り向いた。

「あっ! もしかして聡志(さとし)くん?」

「やっぱり夏香か。久しぶりだな。元気か?」

「うん。元気にやってる」

夏香が楽しげに微笑む。

どうやら夏香の知り合いの男らしい。

こちら側からだと男の顔は見えない。さりげなく場所を変えて男の顔を確かめた。
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