俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「ええ。高校の同級生なんですよ。たまたま席が隣で話すようになったんです」

「そうだったんですか」

長野に越したあとに出会ったということか。登坂氏は俺の知らない夏香を知っている。

そう思うと複雑な気持ちになって胸が軋みを上げる。

俺は今、どんな顔をしているのだろう。きちんと平静を装えているだろうか。

「瀬名さん、どうかされましたか?」

登坂氏の言葉にハッとして我に返った。

やはり顔に出てしまっていたらしい。

「いえ。なんでもありません。すみませんが、所用があるので私はこれで失礼します」

俺は深々と頭を下げて、必死に口角を上げて笑って逃げるようにその場を後にした。
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