俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
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「展示会、大盛況でしたね。さすが課長です! 準備から運営まですごく勉強になりました」

隣に座る宝来がビールジョッキ片手にうれしそうに微笑む。

「いやいや。俺はなにも。みんなが頑張ってくれたからこその成果だ」

展示会を終えてから、今日携わってくれたスタッフとみんなで打ち上げに来ていた。もちろん夏香も一緒だが、あれから俺は夏香と一言も話してはいない。

口を開けば、抑えきれない嫉妬心から彼女にひどいことを言ってしまいそうで怖かったのだ。

できれば視界に入れたくないというのに、こんなときに限って斜め前の席に夏香が座っている。

くじ引きで決まった席だからわがままは言えない。とにかく今は早く気持ちを落ち着かせて夏香と話がしたい。

「そういえば日比谷テクノロジーの感触よかったですね。あそこのバスケチーム、イケメン揃いだから今、若い女性中心に人気じゃないですか? 日本代表に選ばれた久瀬(くせ)選手あたりがウエアのモデルしてくれたらますます話題になりますよね」

「まぁ、そうだよな。そうなればこちらとしても最大限の宣伝にはなるな」

「ですよね。交渉がうまくいって商談が成立したらウエアの打ち合わせに俺も参加したいです」

なにも知らない宝来は興奮気味に話を続ける。俺はうまい返しが見つからなくて苦笑いに似た笑みを返すだけだ。
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