俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
すれ違う心と遠い背中
【すれ違う心と遠い背中】

「夏香!」

「旭さん? 二次会に行かれたはずじゃ……」

夏香が驚き目を大きくする。

打ち上げが終わり二次会に誘われたが、〝あとは若い人たちで楽しめ〟と言って、俺はその場を離れた。そして、二次会には行かず先に最寄り駅に向かって歩きだした夏香の後を追った。

「夏香がいないのに行く意味なんてないだろ。家に帰るぞ」

戸惑う夏香の腕を引いてタクシー乗り場へと足を進めて行く。

「旭さん、手を離してください。会社の人に見られてたら……」

「俺は見られてもかまわない。むしろ見せつけてやりたいくらいだっての!」

感情がコントロールできなくてついつい口調が強くなってしまう。

なんでそんなに俺との関係がバレるのが嫌なんだよ?

あいつの前ではあんなに気を許したように笑ってたくせに。

いつもと違う俺を見て、明らかに戸惑った様子の夏香の顔が目に映る。

夏香の手を取りタクシーに乗り込んだが、夏香はまったく口を開かない。どう話しかけていいか分からないのだろう。

俺自身も夏香にどう接すればいいか迷い、ぼんやりと窓の外を眺めたまま。

俺って、こんなにも嫉妬深い人間だったんだな。

重苦しい車内で彼女の手をただ必死に握っていた。
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