俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
ハッと我に返り頭上を見上げる。

夏香が身体を震わせながら泣く姿が目に飛び込んきて、とっさに夏香から離れた。

「夏香、ごめ……」

すぐにでも謝らなければいけないと分かっている。

でも、言葉が出てこないのは彼女が向けるまなざしが俺を非難しているように思えてショックだったから。

自惚れかもしれないが、夏香も少しは俺に好意を抱いてくれているから、俺が持ちかけた契約結婚を受け入れてくれたんだと思っていた。

だけど、きっとそれは違ったんだ。

彼女の怯える瞳を見て悟った。

夏香は家族を救うために俺の提案を受け入れただけ。

だから、最近は俺から距離を取ろうとしていたのかもしれない。

登坂さんに向けていた穏やかな顔を俺に向けてくれないのは、考えてみれば当たり前じゃないか。

夏香は俺の妻といっても、それはただの契約上に過ぎないんだもんな。
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