俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「そんなに俺のことが嫌いなら、最初から結婚に承諾すんなよ。もう勝手にしろ」

俺はなにを言ってるんだ?

ふだんの俺ならば、もっと冷静沈着でいられるのに。

仕事の商談ならば、いくらでも機転を利かせてうまく誘導できるのに。

なのに、どうして……。

〝夏香のことが好きだ〟

〝俺だけを見ろよ〟

〝他の男なんか見んな〟

世界で一番、大切な女の前では本音が言えないのだろう。

「ち、違うんで……」

「俺、ちょっと出てくる」

泣きながらも必死になにかを言いかけた彼女の言葉を遮って俺は家を飛び出した。
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