俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
テーブルに置かれたマグカップから立ち込める湯気をぼんやりと見つめていた。

「おまえも俺もいろいろ背負うものがあって大変だけどさ。旭は好きな女と結婚できたわけじゃん? それなのにくだらないことで意地を張ってると大切なものを失うぞ?」

顔を上がれば、切なげな笑みを浮かべる陽翔と目が合う。

陽翔の言葉がずっしりと心に響く。

陽翔もまた俺と同じ立場にある。陽翔の父親は陽翔がパイロットを務める航空会社の社長だ。ゆくゆくは陽翔が会社を譲り受けることになるだろう。

傍からみれば、順風満帆に見えるかもしれないが、陽翔の本当にほしいものは手に入らない。

陽翔は過去に大切な女性との別れを経験している。あのときの陽翔の悲痛な表情を俺はいまだに忘れられない。

陽翔の容姿からすれば、女なんて選り取り見取りだろうに、彼女と別れて以来、陽翔は誰とも付き合わないし、親とも距離を置いている。どこでなにをしているかすら分からない彼女を陽翔は今も思い続けているのだ。
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