俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「その期間でお受けするのはできかねます」

「なんで? 俺が着たら宣伝になるじゃん? それが目的でそっちだって俺の依頼を受ける気だったんだろ?」

ニヤリと神尾が笑う。

「神尾くん、そういう失礼なことは言わないの。本当にすみません」

マネージャーがこちらに向かって申し訳なさそうに頭を下げる。

噂どおりの人間だな。

こりゃ周りは大変だ。

「確かに神尾さんに着ていただけることで、こちらにとっても大きなメリットがありますが、私共といたしましては胸を張って誇れないアイテムをお客様に提供することはしたくないんです」

「どういう意味だよ?」

「ご存じか分かりませんが、オーダーウエア一着作るのにたくさんの工程があり、それらすべてはデザイナーと職人の技術の結晶なんです。十分な打ち合わせ、検討、準備、試作……それらを通して寸法云々だけでなく着心地や動きやすさ。そして安全性を確固たるものにし、心から誇れるものをお客様に提供すること。それが我が社のモットーですので、神尾さんの頼みだとしてもその納期では承諾はできません」

「それがそっちの答え?」

冷たい目が俺をまっすぐに見つめてくる。
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