俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「瀬名課長、毅然としていてかっこよかったっす。さすがだと思いました」

商談が終わり外に出ると、宝来の興奮気味の声が耳に届いた。

「いや、あんなの一か八かだ。でも、たとえ商談が流れたとしても俺はモットーを曲げる気はなかったし、後悔はしなかったと思う」

「俺、どこまでも瀬名課長について行きますよ。んじゃ、俺はこのあと岩嶋縫製さんに行って進捗状況をチェックしてきます」

「ああ。よろしく頼む」

宝来が駅へと向かって歩きだした。

宝来は俺のことを褒めてくれたが、決して俺は褒められる人間ではないんだ。

遠くなる宝来の背中をぼんやりと見つめる。

仕事となれば、冷静に対処できるのにな。

夏香の顔が頭に浮び、心が苦しくなる。

ああ、夏香の笑顔が見てぇな。

思わず天を仰いだその瞬間。
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