俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「瀬名さん……?」

真横から若い男性の声がしてそちらを向いた。

「登坂さん……昨日はお忙しいなかおいでくださってありがとうございました」

まさかここで登坂さんと会うなんてな。

動揺から少し目が泳いでしまった。

「こちらこそありがとうございました。後日、改めて正式にウエアの方を依頼いたいと思っていますので、その際はよろしくお願いいたします」

ふわりと笑い、頭を下げる彼を見て思う。

低姿勢で穏やかで優しい。

……確かに夏香が心を開くのも理解ができると思った。

「そう言っていただけてうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、私はこれ……」

「あの……ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」

足早に去ろうとした俺の言葉を遮ったのは登坂さんだった。

「あ、はい。なんでしょうか?」

いったいなにを聞かれるのだろう。

少し身構えながら登坂さんを見つめる。
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