俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～

掬いの手に導かれて

【掬いの手に導かれて】

旭さんとの出会いは、私が高校一年のときだ。

この頃、我が家は父親が事業に失敗し多額の借金を抱えていた。

家族みんなで返済に向けて頑張ろうと歩み始めた矢先、父が倒れしばらく入院生活をすることになった。

私は昼、高校に通い、放課後はほぼ毎日自宅近くのカフェでバイトをして懸命に働き、母親とともに借金返済に翻弄する日々を送っていた。

旭さんはこの頃、私がバイトをするカフェによくお客さんとして来ていて、顔を合わせるうちに会話を交わすようになったんだ。

互いに名前も年齢もなにをしているかも知らないし聞かない。オーダーをとるときや料理を運ぶとき、そして会計のときに他愛もない話を交わす程度だった。

彼が座るのは、店の一番奥の窓際の席。そして、彼はいつもルーティンのように同じメニューを頼んでいた。