俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
それからどのくらい時間が流れただろうか。

頬に感じた優しい温もりに導かれるようにゆっくりと目を開けると、そこには仕事帰りと思われるスーツ姿の旭さんの姿があった。

「起こしてごめん」

旭さんが申し訳なさそうに手を引っ込めた。

「わ、私こそすみません」

とっさにパーカーを背中に隠し、床から起き上がり行き場を失った視線を床に落とす。

昨日一睡もしなかったからか、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

てか、パーカー絶対見られたよね?

自分が貸したパーカーだって気づいた?

旭さんが仮に気づいていたとすれば、十年の間、パーカーを私が持っていたことがバレてしまっただけじゃなく、それを抱きしめて泣いて寝てたとか、一歩間違えたらただのキモイ人だよね?

どうしよう。

なんて言い訳すれば……。
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