俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
旭さんがホッとしたような表情を浮かべてこちらを見る。

「あのさ……」

「はい?」

「……今、すげー夏香のことを抱きしめたいんだけど、触れてもいいか?」

「え? なんでいきなりそんな許可制なんですか?」

そんな風に聞かれるとかえってこちらは恥ずかしい。

「……もう夏香が嫌なことはしたくないから、一応、聞いといた方がいいかと思ったんだよ」

旭さんなりに昨日のことをすごく反省しているらしい。

俺様なのに意外と感受性が強くて繊細な人なんだ。

「……いいですよ」

「ホントか?」

「はい。それからこれからは許可とかいらないです」

「分かった。じゃあこれから俺が触れたいときに夏香に触れることにする」

スッと伸びた彼の指先が私の背中に回る。

彼の温もりに包まれれば、自然と心が穏やかになる。

さっきまであんなに不安に押しつぶされそうだったのに、不思議だ。

「夏香……」

私の名を呼ぶ甘い声。頭上を見上げれば、瞳が絡まる。

「どうしようもないくらい好きだ。ずっと俺の隣にいてくれ」

「……はい」

頬を赤らめがらうなずくと、旭さんの指先が顎に伸びてきて、クイッと上を向かされる。

そして、重なる唇にトクンッと心臓が跳ねた。
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