私のみゆとの日記
第1話
「みゆってさ、彼氏できた?」
そう聞くと、みゆは首を横に振った。
良かった〜。みゆに彼氏が居なくて。
私は安堵した。「ん?どーかしたの?」
「ううん!なんでもない!」
思わず笑ってしまった。
みゆを彼女にするのは私なんだからっ。
「えっ!?今、なんか変なこと考えてなかった!?」
「全然、考えていないよ〜」
小学生の頃からみゆと一緒に居るけど告白する勇気が持てなかった。今年こそみゆに告白しよう、告白すらできないような展開になる前に。
そんなことを考えているうちに授業が始まった。
放課後になった。今日もみゆと一緒に帰ろうと思い、話しかけようとした時だった。
「ねぇねぇ!カラオケ行かない!?」
クラスの女子達がみゆと一緒にカラオケに行くという話をしていたのだ。
私もみゆと一緒に行こうと思い声をかけた。
「あの……その……」
しかし緊張して上手く言葉が出てこなかった。
すると私の思いが届いたのか、みゆがこう言った。
「あっ、あゆちゃんも行かないっ!?」
みゆありがと〜〜〜〜。私は心の中で唱えた。
そして、クラスメート達とのカラオケを楽しんだ。みゆの歌声はとっても綺麗だった。
帰り際みゆと話をしていた。
「楽しかったね〜」
「そうだね!」
いつも通り楽しく会話していた。みゆと別れた後、私は家に帰り、自分の部屋に戻ってみゆとの会話を思い出して1人悦に浸っていた。
次の日、教室に入ると既にみゆが登校していて席に座っていた。
「おはよう♪」
私は元気良く挨拶をした。
しかし返事はない。
みゆは机に突っ伏して寝ていた。
寝顔、可愛いな……。
思わず見惚れてしまった。
「ちょっとぉ〜聞いてるのぉ〜」
みゆに声をかけた。
すると、みゆは目を覚ました。
「あっ!おはよぅ……」
少し眠そうな顔をしながらこっちを見た。
「ふわぁ~。おはよぅ……」
可愛すぎる!!! 朝からこんな表情を見れるなんて幸せだな〜と思った。「どうしたの?何か良いことあった?」
「いや、特に何もないけど」
まあ、実際にいいことがあったんだけどね。
休み時間、みゆと今週末はどこかに出かけないかという話を私から切り出して話していた。
「ねぇねぇ、どこか行こうよ!」
「いいけど、どこ行くの?」
「じゃあ水族館とかどう?」
「うん、いいよ!」
こうして私たちは今週末に水族館に行くことになった。そこの水族館には観覧車があるんだよね...うん...そこで...
約束の土曜日になり、待ち合わせ場所に向かった。
早く着きすぎちゃったな〜。まだ10分前だし。
みゆはまだ来ていなかった。しばらく待っていると、遠くにみゆの姿が見えてきた。
「みゆー!」
手を振りながら彼女の名前を呼んだ。
「あゆちゃん、おっそ〜い」
「えぇ、もう着いていたじゃん」
「あはは〜、確かに〜」
「も〜、またそういうこと言う〜」
私はちょっと頬をふくらませた。
みゆとはいつもこんな感じでふざけ合っている。
とても楽しい気分になれた。
私たちは電車に乗り、目的地に着いた。
中に入ってみると人が多くて驚いた。
「ねぇねぇ、イルカショーやってるみたいだよ」
そう言われて、イベント情報の看板に書いてあるのを見るとイルカショーがもうすぐ始まりそうだった。
「本当だ!見てみる?」
「うん!見たいな〜」
「よし、決定!!」
私たちは急いで会場へと向かった。
イルカショーが始まり、たくさんの種類のイルカたちが順番に芸を披露していった。
その後ショーが終わり、イルカを近くで見ることができた。「かわいいね〜」
「うん、すごいスピードだったね」
「あれ、絶対怖いよね」
そんな話をしていると、係員さんが私たちを呼びに来た。
「あの、よろしければ写真を撮りますか?」
「はい!お願いします!!」
「じゃあ、こちらへどうぞ」
私はちょっと大袈裟に近づいて頬を近づけてピースをした。その写真は大切に保存することにした。
そのあともいろいろな魚を見たりショッピングをしたりと楽しんでいた。
時間はあっという間に過ぎていき、夕方になっていた。
「ねぇねぇ、最後に観覧車乗らない?」
「うん、いいよ」
ここには水族館なのに観覧車があった。
私とみゆは最後の締めとして観覧車に乗った。遂に、来た...。私は緊張でしばらく黙り込んでしまった。
「なんでそんなボーッとしてるの〜」と声をかけられてしまった。
「えっ!?な、なんでもないよ」
「怪しいな〜。何か隠してるんでしょ」
「な、何にも隠してないし!!」
「本当に〜?」
「ほ、ほんとうだってば!!」
「ふ〜ん。まあいいや」
笑って誤魔化しはしたが内心少し焦っていた。
そして観覧車が半周した頃、私は遂に言った。
「あのさ……」
「ん?どうしたの?」
「実はさ……私さ……」
「私さ……みゆのこと好きなんだ」
言ってしまった……。
恥ずかしさのあまり顔をあげられなかった。すると、
「私も好き……」
という返事が返ってきた。
「え……?」
私は驚いて顔をあげた。すると、みゆの顔は真っ赤に染まっていて今にも泣き出しそうな顔になっていた。
私はその顔を見てドキッとした。
「私もね……あゆちゃんの事が好き……。ずっと前から大好き……」
「え、えっと……」
私はすごく困惑していた。まさか両思いだったなんて……。
「なんだ〜!!良かった!!同じ気持ちだったんだ……」
みゆは嬉しそうな顔になった。
「うん……」
「これからよろしくね!」
「うん!!」
こうして、私たちは恋人同士となった。
夕焼けがとても綺麗だった。
6月に入ったある日のことである。
「ねぇ、あゆ〜。またどっか行こうよ〜」と会話をしている中でこう言われた。「いいけど、どこ行くの?」
「ん〜、そうだなぁ……。遊園地とか?」
「わかった、じゃあ次の日曜日でいい?」
「うん、いいよ!」
私たちは遊園地に行く約束をした。
当日になり、私たちは遊園地へ向かった。
「わ〜!いっぱい人がいるね!」
「うん、今日は休日だから多いかも」
「そっか〜。じゃあ、早く並ぼうよ!」
そう言われて、私は列に並んだ。
しばらく並んでいると、ようやく入場できた。
「わ〜!!すごいすご〜い!!」
見上げるとジェットコースターやら観覧車やらなんか急に落っこちるのとか沢山あった。「ねぇねぇ、どれから乗るの?」
「うーん。やっぱり最初は定番のジェットコースターかな〜」
「だよね!」
私たちは早速乗り込んだ。
そして、私は絶叫系が苦手なのにその場のノリでジェットコースターに乗ろうなんて言ってしまったの後悔した。
「ひぃやぁぁああああああああああぁぁぁ」悲鳴を上げながら必死に耐えた。
「きゃ〜!楽しかった!!」
隣に座るみゆはとても笑顔になっていた。
「うん……、みゆはそんな平気だなんて凄いね...」「えへへ〜」と照れ笑いをするみゆ。可愛い。
「次はどこにする?」
「じゃあ、コーヒーカップに乗ってみたい」
そう言われて私たちはコーヒーカップに乗った。
とても楽しい時間だった。
その後、メリーゴーランドなど色々な乗り物を体験し、遂にあの登ってから急に下るやつの名がみゆの口から出てしまった。「あゆちゃ〜ん。あれ乗ろうよ〜」と指差す先はフリーフォールという奴だった。
「え?ちょっ、ちょっと待って!!それだけはダメだよ!!」
「大丈夫だって!怖くないよ?というか最初真っ先にジェットコースター乗ろうとか言ってきた癖に」
「あ、あれはノリで何も考えず言っちゃったから...」
「え〜、じゃあやめとく?」
「う、う〜ん」
私は首を捻った。
「よし、覚悟決めた、行こう」
みゆは驚いて
「大丈夫なの...?」と言ってきたが私は「多分...」と返しておいた。
そして結局並ぶことにした。
「ねぇ、あゆちゃん。これ終わったら何に乗りたい?もうすぐ終わりだけど」
「う〜ん。まだあんまり考えてないけど……」
「そっか〜」と話しているうちに順番が来た。
私たちは係員さんの指示に従って座席に着いた。
「お二人様ですか?」と言われ、「はい」と答えた。
「では、出発しまーす!!」係員さんが言う。
「はいっ!!」とみゆが言う。みゆはこういうときに返事をするタイプなんだよなと私は思った。
そして、ついに始まった。
高い高いタワーをゆっくりとゆっくりと登って行った。私は泣き目になりながらみゆの方を見たが、みゆは「大丈夫大丈夫、一瞬だって」と言ってくれた。私は「ま、まあそれは分かってるけど...」と返しておいた。
遂に1番上まで登ってしまった。私は咄嗟に目を瞑った。そして突然来る体が浮く感覚。
「あああああぁぁぁ!!!!」私は無意識に叫んでしまっていた。終わってみるとみゆはとても楽しそうにしていたが、私は少しぐったりしてしまった。みゆが「あそこのベンチで休憩しようか」と言ってくれた。
「うん……」
私たちはベンチに座って休んだ。
すると、みゆは私の手を握ってくれて言った。
「あゆちゃんの手冷たいね」「え、そっちこそ温かいよ」と言うと、二人で笑っていた。
しばらくして、私たち二人は立ち上がった。
「もう少しで日が落ちそうになってきたね」
みゆは「最後はどこに行こうかって話だけど、やっぱ最後は観覧車でしょっ、王道だしね」と言った。「そうだね」頷いて言った。
私たちは観覧車に向かった。
並んでいる間も話は尽きなかった。
「ふぅ〜。やっと乗れたね」
私はそう言って窓の外を見上げた。
夕焼けで綺麗に染まっている空があった。
隣を見るとみゆの目が輝いていた。
「きれい……」と呟いた。確かにその通りだった。
私たちは暫くの間ずっと眺めていた。
「あ〜、楽しかったね!」
遊園地を出て、家に向かっている途中だった。
「うん、楽しかったね」
「また行きたいね」
「そうだね」
「今度はどこ行こうかな〜」
「今帰ってる途中なんだけど、気ぃ早すぎ〜」
「えへへ〜」
今日は本当に楽しかった。
また一緒に行こうと思う。
でも、今はこうして手を繋いで歩いているだけで幸せだ。
「あ、あゆちゃん。見てみて!」
「ん?」
私はみゆが指さした方向を見る。そこには小鳥たちが仲良さげに肩を寄せ合っていた。
「あ、可愛い〜」
「だよね!あそこだけなんか平和って感じだよね」
「だね〜」
私たちはしばらくそれを見て和んでいた。自然と私の手はみゆの手に伸びていた。手がみゆの手に触れる。
「あ、ごめん」
私は慌ててみゆと繋いだ手を離そうとした。しかし、みゆはギュッと握ってきて「もっと強く握りたいから、このままにしてて」と言われた。
私たちはそのままの状態で歩き始めた。
「ねぇ、あゆちゃん。私たちって結構お似合いだと思う?」
「え?ど、どうだろう……?....結構いいコンビだと思うよ」私は答えた。「ふ〜ん、そっか……」
それから、特に会話もなく歩いていった。
やがて、分かれ道に辿り着いた。
私は右でみゆは左の道へ行く。
「じゃあ、バイバ〜イ」
みゆは笑顔で手を振った。
私は「ばいば〜い」と返した。
みゆの背中が見えなくなるまで見送ってから、私は帰路についた。
私が帰ったときにはもう7時を過ぎていた。
お母さんが「おかえり」と出迎えてくれたので、私は「ただいま」と言い、自分の部屋に戻った。そしてベッドの上に寝転がった。私たちはネットではあまり喋らないようにしようと決めていた。なぜならネットで喋りすぎてしまうと実際に会って喋る意味が薄れてしまうと考えたからだ。私はスマホをいじっていたのだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
「……ちゃん!……あゆちゃん!!」という声が聞こえてきた。私は起き上がって、「ん?」と言った。
すると、みゆの声が返ってきた。
「もう、お昼だよ?早く行こっ」
なんだか様子がおかしい。寝た時は夕方でもう今昼?そしてここどこ?と思い、周りをキョロキョロと見渡していると、みゆが「ほら、行くよ〜」と言ってきたので、私はみゆについて行った。
着いたところは可愛いいろいろなぬいぐるみが座っている奇妙な場所だった。ステージのような場所にみゆに連れてこられた。私が困惑していると私の身長より少し大きいぐらいのバカデカいウェディングケーキが運ばれてきた。みゆは「ほら一緒に食べよっ」と言ってきた。
ここでハッと目が覚めた。お母さんのご飯ができたという声がする。どうやら夢を見ていたらしい。途端に私は夢の内容を振り返って赤面してしまった。「あゆちゃ〜ん。何やってるの?早く降りてきなさいよ〜」
お母さんはそう言って下に降りていった。
私は「はーい」と言って一階に降りた。
食卓には美味しそうな料理が並んでいた。
お母さんは「今日はちょっと豪華よ」
確かに今日はいつもより品数が多い。
妹のひなも「ちょっと多すぎない?」と言っていた。お父さんはまだ帰っていないみたいだ。
私は席に座り、いただきますをして、食べ始める。
「うまっ」
思わず口から出てしまった。
「あら嬉しいわね〜」
お母さんは嬉しそうにしている。
妹は「そういえばさ、最近彼氏と上手く行ってるの?」と言ってきた。途端に私は喉に何かを詰まらせて噎せてしまった。「か、彼氏ぃ〜?」私は聞き返した。
「うん、だってこの前遊園地に行ったんでしょ?あ〜、デートね、デート!いいなぁ〜」
ひなは羨ましがっている。
「な、なんのことかな〜?」私はとぼけてみる。
「あ〜、図星だ〜。やっぱりそうだと思ってた。」
「むむむ」
私は妹に言い返す言葉が見つからなかった。
「それでどんな人なの?」
「えっと……」
私は答えに困ってしまう。
「顔とか性格とかいろいろあるじゃん!」
「ん〜、優しい?」
私は適当に応えた。
「え〜、それだけ?」
「秘密〜!そこまで深堀しないでよ〜」
と私は言った。
「ちぇ〜」
妹は不満げだったが納得してくれたようだ。
食事中、お母さんが「あゆちゃん、進路は決まった?」と聞いてきた。
「あ、まだ」
「そう。そろそろ真剣に考えないとダメよ」
「分かってる、分かってる...うん分かってるから」
「ふぅん、それなら良いけど……」
私は母の言葉を聞き流し、味噌汁をすすりながら窓の外を見た。外はすっかり暗くなっていた。そろそろ夕飯を食べてお風呂に入って寝ようと思い、食器を流しに持っていった。「ご馳走さま」
私が言うと、お母さんは「はいよ」と返した。
私は自分の部屋に戻り、ベッドに飛び込んだ。
スマホを開くと、通知が来ていた。
「あゆちゃん、今から通話してもいい?」
「うん、いいよ」私は返事を返し、イヤホンをつけて、電話に出た。
『もしもし?』
「もしもし、みゆだけど」
「知ってる。どうしたの?」
「あの、特に用事はないんだけど、なんか話したいなって」
みゆは照れくさそうに言ってきた。
「そういう時あるよね、分かる」
私は返した。
「でしょ?だからこうして電話してみた」
「可愛いねぇ」
私はみゆを揶揄ってみた。
「か、可愛くないし!//」
恥ずかしがっている。可愛いいいい〜。「みゆホントに可愛いもん」
「またそんなこと言って、もうっ」
怒った口調だが声色からは怒気を感じない。むしろ喜んでいるように聞こえる。
「みゆ、明日空いてる?」
「ん?大丈夫だよ」
「じゃあ買い物行かない?」
「いいよ〜どこに買い物へ行くの?」
「ショッピングモール」
「分かった。待ち合わせは何時にするの?」
「10時半くらいでどうかな?」
「オッケー、というか今日遊園地に行ったのに早速次の日は買い物?」笑いながら言った。
「別にいいでしょー」
「いいけどねー」お互いに笑った。
「じゃあ、ばいばーい」
「うん、じゃあねー」
私は通話が切れたことを確認し、枕に顔をうずめた。
それから風呂に入り歯を磨き、いろいろ終わらせてからまた布団に戻った。
私はみゆが好き。みゆも私が好きでいてくれている。
でも時々不安になる。
みゆは本当に私のことが好きなのか? 私はみゆのことが好きだ。
それは間違いない。
でも、もし、本当は好きじゃないなんて言われたら……。
私は怖い。
いや、そんなこと考えたって仕方がない今を楽しもう。そう自分に言い聞かせて眠りについた。
次の日、目が覚めると既に9時を過ぎていた。急いで支度をして家を出た。ショッピングモールには何とか間に合いそうだ。
電車に乗っている最中、昨日のことを思い出し少し憂鬱になった。
私はみゆが好き。
みゆは私を好きでいてくれる。
信じたい。
でも、疑ってしまう自分が嫌だ。
早く着かないかな。
私は、駅に着くと早足で改札を通り抜けた。ショッピングモールにつくとみゆがもう着いていた。
「あれ〜、今まだ予定より10分前だけど早いねみゆ」
「まぁ楽しみにしてたからさ〜」
「へぇ〜」
「あゆちゃんは?」
「私も楽しみだったよ」
「そうなんだ〜」
「とりあえず入ろうよ」
「うん!」
私たちは店内に入った。休日ということもあり、人は多かった。
「人多いね〜」
「うん、やっぱり日曜日だしね。何か買いたいものとかある?」
「特にないかも〜」
「そっか」
会話をしながら歩いていると、アクセサリーショップを見つけた。
「ここ入ってみたいかも〜」
「おっけー」
中に入ると様々な商品があった。
「お互いに似合いそうなものを見つけて来てプレゼントするって言うのはどう?」みゆが提案してきた。
「いいかも!」頷いて言った。「じゃあ、決まり!30分くらいで探して来てここで集合しよう」
「オッケー」
私はみゆと別れて、ぶらついているとネックレスのコーナーに着いた。
「おぉ……」
私は思わず感嘆の声を上げた。
いろいろな種類のものがあり、どれも綺麗なものばかりだった。
私はその中でピンク色のハートがついたネックレスを選んだ。値段は1000円ほどだった。
私はそれを手に取り、みゆの方を見た。みゆはまだ来ていないようだったので、会計を済ませ、先に待っておくことにした。
しばらくすると、みゆが来た。
「ごめんなさい、遅れちゃった」
「大丈夫だよ」
「で、あゆちゃんはどんなのを買ったの?」
「これにした」そう言って私は手にとったピンクのハートのネックレスを見せた。「あっそれ可愛いね」
「でしょ!みゆが選んで来た物は?」「これ」みゆが選んだものは、星型のペンダントトップがついているものだった。
「可愛いじゃん」
「でしょ!まず最初に私があゆちゃんにこのネックレスかけてあげるよ」
「うん」
私は少し頭を下げる。「はい、これでよしっと」
「ありがとう」
「次はあゆちゃんが私にやって」
「分かった」
「お願い」
「任せて」
私はみゆの後ろに回り込み、首元に手を伸ばす。
「ちょっとくすぐったいかも」
「ちょっとドキドキしちゃわない?こういうの」笑いながら言った。
みゆの首に手を回す。
「ふぅ……できたよ」
「ありがと」みゆは手鏡で確認している。
「どう?」私は聞いてみた。
「いい感じだよ」みゆは微笑んでいる。
「あゆちゃんのもいい感じ。めちゃくちゃ似合ってる」改めて言われると凄い恥ずかしい。「じゃあそろそろいこっか」
「うん」
私たち二人は店を出て歩き出した。
「これからどこ行くの?」
「う〜ん、適当にブラついてみる」
「おっけー」私は返事をした。そして、私たちはいろんなところを回った。
雑貨屋さんでは二人でおそろいのマグカップを買ったり、服を見て回ったりした。
時間はあっという間に過ぎていった。
気がつくと時刻は3時になっていた。
「そろそろ帰らないと行けないね」
「そうだね」私たちはショッピングモールから出て帰路についた。
帰り道、私とみゆは他愛もない話をしていた。
「そういえばさ、昨日のみゆなんか変だったよね。私が告白する前からずっとボーッとしてたっていうかさ」
「えっ!?そ、そうだったかなぁ」みゆはちょっと焦ったような笑ったような感じで答えている。
私はみゆの目を見つめた。
「まさかみゆ、私がする前から私とそういう展開にになることを想像してたりして」
みゆの顔が少し赤くなっていくのを感じた。
「....」みゆは俯いている。図星らしい。
「そっか」私は話題を変えた。
「じゃあさ、明日暇?カラオケとか行こうと思っててさ」
「あっ、明日か〜、明日は平日だから時間無いかも」
「そうなんだ〜」残念そうにしている私の様子に気付いたのか、「また今度一緒に行こうね」と言ってくれた。
「うん!」私は笑顔で返した。
「あゆちゃんはさ、いつも楽しそうにしてるから羨ましいよ」
「そうかなぁ」
しばらく沈黙が続いた後、みゆは真剣とも冗談とも取れるような妙な表情で言ってきた。「あゆちゃんは私の事好き?」私はもちろん「大好きだよ!」と元気よく答える。
「よかった」
みゆはとても嬉しそうな顔をして笑っていた。
その顔を見てるととても幸せな気持ちになった。
しばらくして分かれ道に来たのでそこで別れた。
家に帰ってからもあの時のみゆの言葉が頭から離れなかった。
「あゆちゃんは私の事好き?」
「大好きだよ!」
この言葉を聞いてみゆはどんな事を思ったのだろうか。
「良かった」
この一言を聞く限りだと、みゆはきっと喜んでくれていたはずだ。
しかし、それはただの希望的観測に過ぎないのかもしれない。
本当は迷惑だと思っていたのではないだろうか……。
みゆが私のことを好きなのは知っている。だからこそ分からないのだ。
みゆが何を考えているのか。
恋とはなんなのか……。それすらもよく分かっていない。
ただ一つ言えるのはみゆのことを好きだということだけなのだ。
私は自分の想いをノートに書き留めることにした。
夜寝るの決まった時間に書きたい時に書くことにした。『みゆのことが好きです』
『みゆが傍にいてくれればそれだけで幸せです』
『みゆが困っている時は助けたいと思います』
『みゆの笑顔を見ると胸がドキドキします』
「よし!これでOKっと」
私は満足気にノートを閉じる
7月の夏休みに近いある日の事である。
今日も学校に行き、授業を受けて下校している。
私はある人物と待ち合わせをしている。
そう……みゆだ。
私はみゆと二人で一旦家に帰った後に会う約束をしていた。
最近になって、みゆと二人きりになる機会が多くなった気がする。
初めはほんの些細なことだった。
例えば、お昼休みに一緒に弁当を食べるようになったり、放課後に少しの間一緒に帰ることが多くなったりした。
他にも、みゆと話すときに目を合わせる回数が増えたように感じる。
最近ではみゆと目が合うたびにドキッとする。
今まではこんなことはなかった。
私はみゆと話すときは自然体で話せるように努めてきた。
それに、私はみゆと付き合っている。
だから、私はなるべく普段通りに接するように心掛けているのだが……。
なぜか最近はうまくいかないことが多い。
みゆのことを考えてしまうとどうしても落ち着かない。
まるで、心臓が暴れまわるように鼓動を打つ。
最初は疲れてるだけだと思ったけど、日に日に落ち着く時間が遅くなっている。
このままではいつか取り返しがつかないことになるのではないかと考えることがある。
そんなことを考えているうちに約束の場所に着いた。
「ごめんね、待った?」
そこには、私服姿のみゆがいた。
「ううん、今来たところ」
みゆは優しい声で答えた。
「じゃあ行こっか」
私はみゆと一緒に歩き始めた。
「どこに行くの?」
「ん〜、そうだなぁ。あ、あそこの喫茶店とかどう?」
「いいよ〜」
私たちは喫茶店に入った。
席につき注文を済ませる。
しばらくすると飲み物が来たのでそれを飲んだ。
「美味しいね」
「うん」
私はさっきから緊張していて味がよく分からなかった。
沈黙が流れる。
何か話題はないかな、と考えていると、みゆの方から話しかけてくれた。
「あゆちゃんってさ、最近私のことばっかり考えてるでしょ?」
突然の発言だったので私は動揺した。
「えっ!?」
「ふふ、図星でしょ?」
「うん……」
「やっぱりね〜」
「どうして分かったの?」
「だって最近のあゆちゃん、私のことしか見てないんだもん」
最近みゆとよく目が会うなと思っていたのは私が無意識にみゆの方を見てたのか...全然気づかなかった。「そ、そうなんだ〜」
「うん」
なんか恥ずかしい……。
私とみゆはそれから他愛もない話をして過ごした。
そして、いつの間にか日が暮れかけていた。
「そろそろ帰らなくちゃ」
「もうこんな時間なんだ」
「うん。みゆは大丈夫?」
「平気だよ」
「良かった」
私達は会計をして店を出た。
帰り道の途中、みゆが私の手を握ってきた。
私は驚いてみゆの顔を見た。
「こうすれば離れなくて済むと思って」
みゆはそう言った。
私たちは分かれ道に着くまでそうしていた。「また明日学校で会おうね。バイバーイ!」
みゆが元気良く手を振っている。
私は小さく手を振り返した。
私はいつものように自分の部屋でくつろいでいた。
みゆのことが頭から離れないと同時に夏休みのことも心配していた。学校が無かったらみゆと頻繁に会えなくなっちゃう。後夏休みの宿題もあるし...。その時良い案が思いついた。みゆを私の家に招いて一緒に宿題をやればいいんだ!早速明日学校でみゆに話そう。
次の日、そうえば今日は終業式だった。私は学校に着き自分の教室へ向かうと、すでにみゆが来ていた。
「おはよう」
「あゆ、おっはー!」
「ねえ、今日学校が終わったら私のうちで宿題しない?」
「いいよ!あゆの家楽しみだなぁ」
学校が終わり、みゆを待っていた。しばらくしてチャイムが鳴る音が聞こえた。
私は玄関へ行きドアを開けるとそこにはみゆの姿があった。
「こんにちわ〜」
「いらっしゃい。上がって」
みゆを招き入れ私はリビングへと案内する。
そしてソファーに腰掛けた。「麦茶でいい?」
「うん」
キッチンに向かい冷蔵庫からペットボトルを取り出しコップに注ぐ。
「はいどうぞ」
「ありがと」
私はみゆの隣に座った。
「そういう訳で、今日は宿題をするんだけど決めたいことがあって」
「何?」
「私は夏休みの宿題をどうしても先延ばしにしちゃって痛い目を見るっていうのを繰り返してるけどなかなか改善しなくて、だから一緒に毎日うちで宿題を一緒にやって欲しいの」
「なるほど。わかった一緒に少しづつやっていこう」
「ありがと!」
「宿題ってどのくらいあったっけ」
「数Ⅱ、数Bが冊子になったプリントそれぞれ30ページ、20ページに英語が単語100語、に化学、物理がプリントそれぞれ3枚そして読書感想文」
「うへぇ〜多いね。」
「多い」
「頑張ろうか」
「うん」
「じゃあまずは数学から始めよっか」「了解」
こうして私たちは2人で協力して夏休の宿題を進めることになった。
今日はみゆと一緒に図書館に来ていた。
今私たちがしているのは、読書感想文のための本を選ぶことだ。
ちなみに去年は国語の教科書にある夏目漱石の『吾輩は猫である』をやった。
あれはとても大変で、とにかく長い文章を読むのが苦痛でしょうがなかった。しかもその本の内容が「飼い主について行ったら家には誰もいなかったので、仕方なく寝床を探していた」というものだった。正直意味不明だし、共感もできなかった。
「あゆちゃん、これなんかどうかな?」
みゆが差し出してきたのは、太宰治の短編集だった。「うん、それなら読みやすいかも」
私たちはこの小説を借りて読むことにした。
みゆも借りる本を決めたらしい。
家に帰ってから私はさっそくこの本を読み始めた。
しばらくすると、みゆの方から声をかけられた。
「あゆちゃん、ここ教えて欲しいんだけど……」
「どれ?」
私とみゆは勉強をしていた。
みゆは、私の横で数学のプリントを広げている。
「この問題なんだけど」
「ああ、これはね……」
私はみゆが指差した問題の説明をした。
「あっ、そっか……理解できた」
「良かった」
「あゆちゃんはすごいなぁ」
「そんな事ないよ」
「でも私なんかより全然頭がいいと思う」
「みゆだって頭良いじゃん」
「そうかな?」
「そうだよ」
みゆと一緒の時間。
「ねぇあゆ」
「なに?」
「好きだよ。大好き!」
「急にどうしたの?私も好きだけど……」
みゆは突然こんなことを言い出した。
「ふふふ、両思いだね!嬉しいなぁ」そう言って私の膝枕にダイブしてきた。
「まさか膝枕するために突然好きって言ってきた?」
「えへへ〜、疲れちゃった。ちょっと休もう」
「しょうがないなぁ」
「あゆ、大ちゅき♡」
みゆの顔を見つめる。
可愛いみゆの笑顔を見てると私まで嬉しくなって来る。
「どうしたの、じっと見つめちゃって」
「みゆの顔凄い可愛いなと思って」、「やめてよ、恥ずかしい」
「照れてるところもまた可愛くて」
「もぉ〜」
「みゆ、愛してる」
「あぅ……あゆ、ずるいよ」
「ねぇ...みゆ、キス...しない?」
私は幸せで頭おかしくなってこんなことを口走ってしまった。「うん」
みゆは顔を真っ赤にしてうつむいたまま答えた。
私はみゆを抱き寄せて唇を重ねた。
甘い匂いがする。
気持ちいい。
息ができない。苦しい。
それでも私はみゆを求める。
とってもとっても幸せだった。
そして夏休み2日目、私たちは今日の分の宿題を終わらせた後、夏休みにどこかへ行こうという話をしていた。みゆが「海行きたい!」と言ってきた。「海!?」
「うん、海!水着着れるし」
「まあいいけど、あんまり人多くないところが良いな」
「じゃあ、ちょっと遠出しようよ!」
「遠くても大丈夫?」
「もちろん!」
「ここらでちょっと遠くて綺麗で人少ない海って言ったら伊豆かな」
「じゃあ決まりだね」
「あのさ、どうせならホテルに泊まってみない?2人で」
「えっ、ああ、いいけど親がなんて言うか...」
「幼なじみと2人でって言ったらきっとOK出るって!」
「分かった!」
私たちはこれから受験で来年の夏休みはこんなことできないことと幼なじみと2人だから大丈夫という武器を使って何とか親を説得することができた。
そしてしばらく経ったある日私たちは電車に乗って伊豆へ向かった。
「結構遠いね」
「うん」
「ところであゆちゃん」
「ん?どしたの」
「手、繋いでもいい?」
「うん」
みゆは私の手を優しく握って来た。とても柔らかい感触が伝わってくる。
「みゆの手、すべすべしてる。女の子らしい」
「そういうこと言わなくて良いから!」
「ごめん笑」
私たちは恋人繋ぎをして電車に座っていた。「次降りるよ」
「うん」
駅に着いた。
改札を出て、バスに乗る。
「どのくらいかかるんだろ」
「10〜20分位じゃないかな」
「そこそこだね」20分ほど乗って目的のバス停に着く。
そこから歩いて15分程度で着く。
私たちは海岸に来ていた。
「結構綺麗なところじゃん」
「そうだね。とりあえず海の家行こっか」「おーけぃ」
海の家に行く途中、あるカップルを見つけた。
男の人は優しそうな顔立ちをしていた。その男の隣にいる女の人の見た目はとても可愛くスタイルも良い。
私はみゆのことをチラッと見た。まあ、みゆには及ばないけどね。
「どうしたの?」
みゆも気になったのかこちらを振り向いてきた。
「ううん、なんでもないよ」
「そう?それならいいんだけど」
その後私達は海の家に行き昼食を食べてから海の家の更衣室で水着に着替えた。「どう?似合ってる?」
みゆは水色のビキニを着ていてとても可愛いかった。
「めっちゃかわいい!」
私は青色の花柄のビキニだ。
「あゆちゃんも、凄い可愛くて良いと思うよ!」
「ありがと」
「さ、泳ご!」
みゆは私に手を差し伸べる。
私はみゆの手に掴まり海の中へと入っていく。
「冷たくて気持ちい〜」
「ほんとだぁ」
みゆは私を後ろから抱きしめて来た。
背中に伝わる柔らかな胸の感覚。
心臓の鼓動が早まる。
「ちょ、ちょっと何してるのみゆ」
「えへへ、良いでしょ〜」
みゆはギュッと力を込めてくる。
「苦しいってば」
「えぇ〜しょうがないなぁ」
みゆは力を緩めた。
海は透明感があって凄く綺麗だった。波が打ち寄せてきて足に当たる。
気持ちいい。
「みゆ!あそこの岩まで競争しようよ!」
「いいよ!負けても文句なしね!」
「もちろん!」
私はみゆの手を引いて走り出す。
「行くよ!せーのっ!」
みゆの方が少し早かった。
「後少しだったのに〜」
「ふふん♪まだまだ甘いねぇ」
「もう1回勝負!」
「おっけーい」
「じゃあいくよ!せーの!」
今度は私が勝った。
「やった!勝った!」
「ぐぬぅ……」
「これで1勝1敗だね!」
その後もめいいっぱい遊んだ。時には砂浜で穴を掘ったり、波が来るところで一緒に座って波を感じたりした。気づけば日が暮れていた。
「そろそろホテルに向かおうか」
「そうだね」
ホテルはここから歩いて20分程度の場所にあった。
「疲れちゃった」
「早くホテルに行こう」
私たちは歩き始めた。その時、目の前の曲がり角を曲がってきた男がいた。
その男は私たちを見ると急に立ち止まった。
「あっ…………」彼は声を漏らすとそのまま走ってどこかに行ってしまった。
「今の人知ってるの?」
「うん、同じ中学の人だった」
その男の名はすっかり頭から消えていたがこの出来事で少し思い出した。
確か名前は"高橋 裕也"(たかはし ゆうや)とか言ったかな。
みゆは彼について語り出した。
「あの人とは中2の時に知り合ったんだ。そしてさ、その夏の頃に告白されちゃって」
「えー!告白されたことあったんだ」
「断ったけどね」
「私、その頃もみゆと一緒だったけど全然気づかなかったよ」
「向こうも誰にも言わずに秘密裏に告白してて奇跡的に誰にも気付かれず噂にもされずに終わったんだよね」
「そうだったんだ」
みゆに告白する前はみゆはすっごく可愛いからさっさと告白しないとすぐ先を越されちゃうなんて思ってたけどもう既に告白されていたとは。
私は無意識に後ろからみゆに抱きついた。「わぁ、びっくりした」
「みゆのこと大好き」
「あ、ありがとう。もしかして私が告白された話を聞いて嫉妬しちゃった?」
私の顔が真っ赤になったのが自分でも良く分かった。私は無言のまま頷く。「あはは、あゆちゃんは可愛いなぁ」
そう言いながらみゆは私の頭を撫でてくれた。
「んふ〜」
私は目を細める。
とても心地よい気分だ。
みゆと付き合い始めてから3ヶ月程が経過している。最初は私とみゆは付き合う前と同じように接していたのだが、最近になってやっと恋人らしいことも増えてきた。
例えば手を繋いだり、キスしたり……。
「あ、ほらホテル見えてきたよ」不意にみゆが声をかけてきた。「ほんとだ!なんかワクワクしてきたかも」
みゆと私は駆け足になる。
海沿いにある白い建物が見えてくる。
あれが今日泊まるホテルだろう。
私たちはホテルに入った。ロビーには誰もいない。フロントにいる人は1人だけいる。
私と彼女はカウンターまで行った。
「いらっしゃいませ」
「予約している高柳です」
「かしこまりました。ではこちらの用紙の必要事項をお書きください」
「はい」
「ご記入終わりましたでしょうか?」
「大丈夫です」
「それではチェックインさせていただきますね。お部屋番号は704になります」
鍵を受け取った。
「ありがとうございます」
エレベーターに乗って部屋の階に行く。
7階に着き廊下を歩く。
「ここだ!」
みゆと一緒に部屋に入る。
窓の外の海が見える綺麗な和室だった。
「凄ーいいい眺めだね〜」「そうだね〜」
荷物を置いて窓から外を見る。
「ね〜みゆ〜」
「どしたの?」
私は甘えた声で話しかける。
「ぎゅーってしてぇ♡」
「ふふっ、いいよ」
そう言ってみゆは私に近づいて抱きしめてくれた。こんないい眺めの部屋でハグをするなんて私はなんて恵まれているのだろう。私はみゆに体重をかける。
「んへへ……幸せ……」私は思わず声が漏れた。
「私とハグしてんだから当たり前でしょっ」みゆが言った。「...うん...」
「じゃあそろそろご飯食べに行かない?」
「賛成」私たちは着替えてからホテルのレストランに向かった。メニューを見て注文する。
「美味しいね」みゆが言う。「うん」私は答えた。
食事を終えた私たちは自分たちの部屋に戻った。
「さてと、次はお風呂だね、ここは露天風呂で海が見えるんだって!」私が言った。「楽しみだね」
「うん」
私たちは大浴場に行った。
脱衣所で服を脱ぐ。
「あゆちゃんの体綺麗だよね」
「えっ!?」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「も〜、照れちゃって」みゆが笑って言った。みゆは可愛いなぁ。
本当に愛おしくてしょうがない。
私とあゆは浴槽に浸かる。
「ねぇ、みゆ」
「ん?どしたの?」
「私ね、今すっごく幸せなんだ」
「さっきからずーっとそれ言ってるね」
「ずーっと言ってちゃダメ?」
「ううん、全然、もっと言ってもいいよ
。でもさ、あゆちゃんはそんなに私のこと好きなんだ」
「そりゃもちろん」
「そっか、嬉しい」
みゆは笑顔を浮かべた。
「みゆはさ、私と付き合って良かったと思う?」
「思う」
「即答じゃん」
「だってあゆちゃん可愛いもん」
「なんか恥ずかしいなぁ」
「それに優しいし」
「それはみゆもだよ」
「あと料理上手だし」
「それもみゆも同じだね」
私はそう言いながらみゆのお腹を触った。柔らかい。私はみゆの肩を抱くようにして体を密着させるように抱き寄せた。みゆは顔を赤く染めている。可愛いなぁ、みゆは。
「あ、いきなりそういうことするのズルい!」とみゆが言ってきた。
「えへへ〜、だってしたくなったんだもん」
「それなら私にだってすることがあるんだからね」そう言ってみゆはキスをしてきた。そして舌を入れてきた。私とみゆの顔の距離はゼロになる。
「はぅ……み、みゆってば大胆……」
「別にいいでしょ、私たち付き合っているんだから」
そこから少し浸かったあと、私は言った。
「ねぇ、そろそろ外の露天風呂行かない?」
「うん!行こうか」
私たちはお風呂から出た。タオルを体に巻いて廊下に出る。階段があって、それを登っていくと、そこには景色が広がっていた。目の前は海が広がっている。水平線まで見渡すことができる。とても素晴らしい光景だ。私たちは露天風呂に入る。湯船には先客がいた。大学生くらいの女性グループだった。「わーすごーい」「綺麗ー」などという声が聞こえる。彼女たちはとてもテンションが高い。私もテンションを上げることにした。みゆと手を繋いで露天風呂に入ったり、お湯を掛け合いっこしたり喋ったりしてるうちにあっという間に時間は過ぎていった。
「ふぅ……楽しかったね〜」
「そうだね〜」私たちは大浴場から出て、部屋に戻った。私とみゆは布団の上で座っていた。
「今日はどうだった?」私は尋ねる。
「すっごい楽しかったよ、あゆちゃんは?」
「うん、すごくよかった」私はみゆを抱き寄せる。
私は自分の唇でみゆの口を塞いだ。それからしばらく私たちはキスをした。
長い時間が経った頃私たちはお互い満足したので口を離した。私が言う。
「じゃあもう寝ようかな……」
みゆが隣で言う。
「もっと顔近づけて、ハグしながら寝よう」
「う、うんいいよ」
私はドキドキして体感2時間くらい寝られなかった。みゆの寝顔は凄い可愛かった。
私はドキドキし過ぎてしっかり寝られるのか不安になっていたがちゃんと寝られたらしい。目が覚めるとみゆの顔がすぐ近くにあった。みゆは微笑みかけてくれる。私もつられて笑顔になる。
「おはよう」私が言うと、みゆは返事の代わりにキスをしてくれた。
みゆとのキスはすごく幸せだった。唇を重ねるだけの優しいキスだったが、私はこの上ないほど満たされた気分になった。
「朝ごはん食べに行こうか」私は言った。「うん」
私たちは食堂へ向かった。朝食はバイキング形式だった。私は適当にサラダやフルーツなどを取ってきた。「あゆちゃんはいつも健康的な食事だよね」みゆも料理をたくさん取ってきていた。「うん、野菜とか好き」
「私も好きー」
それから食事を済ませて部屋に戻った。
「今日はどこに行くの?」みゆが言った。
「今日は伊豆を観光する予定だよ。」
私は答える。
みゆは楽しみにしてる様子だった。
私達は城々崎海岸へ向かった。バスと歩きで30分程の場所にあった。「ねぇ!見て!」みゆは海に向かって叫ぶ。
「わぁ……綺麗…………」みゆが感動しているのを見て私は嬉しかった。
みゆが私の方を向く。私はみゆと目を合わせた。すると彼女は照れたような顔をする。そんな顔もまた可愛いかった。
「ほら、みてあれ、大吊橋だよ!」
「ホントだ!渡ってみよ!」
みゆがテンションを上げて言ってくる。こういうところは子どもっぽいなと思うけどそういうところがまた可愛らしいと思う。
私たちは二人で吊り橋の渡り始めの場所まで来た。みゆが私の方を見る。私は彼女に見惚れてしまう。横を見るとそこには絶景のオーシャンビューが広がっていた。私はみゆの方へ体を寄せた。ここへ来て私の怖がりが発動してしまった。
「あゆ?」
「ちょっと..怖い」
私はみゆの手を強く握る。
「ほら、渡るよ」みゆが言った。
私たちを乗せた吊り橋はゆっくりと進んでいく。私は恐怖と不安で胸いっぱいになっているのを必死に隠しながら、平然な態度をとっているつもりだったのだが、みゆにバレているのかわからない。だけど、もしそうなら嬉しいと思った。
みゆが私の手をぎゅっと握り返してくる。それに応えるように私も強く握り返す。そして、その手を恋人繋ぎにする。お互いの体温を感じることができる。それが心地良い。私はこんなにも安心感を得られることを初めて知った気がした。それはきっとみゆと一緒にいるからだろう。
みゆのことが好き。愛おしいと思っている。
「海が凄い綺麗」みゆが言った。「ホントだ、来て良かった」私も答えた。
「そろそろ着くね」みゆはそう言い、私を見た。
「そうだね」
そして私たちは無事に大吊橋を渡り終えた。
渡り終えた場所は岩が多くある場所だった。
「岩の上で休憩しよ」
みゆが言う。
「いいね」私が同意する。
私たちは岩に座ってしばらく景色を眺めていた。
「なんかここ落ち着くわ」みゆが言った。
「なんでだろ……」
私は少し考える。
「多分、潮の匂いがするからかな?」
「なるほどね」
「ねぇあゆ、これからどうしようか」
みゆが尋ねてきた。
「うーん、とりあえずどこかでご飯食べようよ」
「どこで食べるのかは決めてないの?」
「そこら辺は行き当たりばったりで行こうかと思って」
私は答える。
「あ、近くに海が見えるカフェがあるみたいじゃん。そこ行こうよ」
「え、ほんと?じゃあそこしよっか」
私たちは今からそこに行くことにした。
海沿いの道を歩いていると目的の店を見つけた。
「ここみたい」みゆが言う。
「うん」私は返事をした。
店内に入ると店員さんに声をかけられた。「何名様ですか?」
「二人です」みゆが答える。
「こちらのお席にご案内いたします」
私達は席に着いた。
「メニューをお持ちしました」
「ありがとうございます、これお願いします」
「じゃあ私はこれで」
みゆと私はは注文をする。
「かしこまりました、少々お待ちください」
私はふと外をみる。
そこには綺麗な海が広がっていた。「わぁ……綺麗」思わず声が出る。
「確かに、めっちゃきれい」みゆも賛同してくれる。
それからしばらくして料理が運ばれて来た。とても美味しかった。
「よし、じゃあそろそろ帰ろうか。確かこの辺に駅があったはず」
「お土産はどうするの?」
「ここから20分くらい歩いたところに駅とお土産さんがあるみたいだからそこで買おう」
「わかった」
会計を済ませてから私達は歩いて駅まで向かう。
「ねぇ、手繋ごう」みゆが言ってきた。
「うん」私は彼女の手をギュッと握る。「……///」みゆは黙り込んでしまった。
「あゆ、好き」
みゆが小声で呟く。
「知ってる」
「……バカ」
彼女は私の方を向いて、唇を重ねようとしてくる。
「もう、いきなりやめてよね。こんなところで」私は恥ずかしさを隠すために怒ったふりをしてみた。
「だってあゆが悪いんだもん」
「なにもしてないでしょ」
「いつも可愛い顔見せてくれるから」
彼女が微笑む。
私は照れくさくて目を逸らす。
「みゆの方が可愛いよ」
そうこうしているうちにお土産屋さんまで着いた。「みゆ、どれにする?」
「やっぱりここは食べ物がいいと思うんだけど」
「じゃあそれで決まりだね」
私はクッキーとチョコを買うことに決めた。
みゆの方を見ると、何かを手に取ってじっと見つめている。「みゆは何を買ったの?」私は尋ねた。
「しっとりした生チョコレートケーキってやつ」
「へぇー、美味しいといいね」
「そうだね」
みゆが笑顔になる。「あ、あとこれ」
みゆは手に持っていたものを渡してきた。
「ん?スマホカバー?」
「うん、あゆとお揃いのが欲しくて」
「私に買ってくれたの?」
「うん!」
みゆはとても嬉しそうな顔をしていた。
それから駅へと向かい、電車に乗った。
電車に乗るとみゆは疲れたのか眠ってしまっていた。私はそんな彼女を起こさないように優しく抱きしめながら窓の外を見る。
窓には私達二人の姿が映っていた。
そしてその背景には青い空が広がっている。
私にとって、今この時が一番幸せだった。
家に帰って私の部屋に着くと今まで平静を装っていたがホテルでみゆと寝たことを思い出してしまっていた。
みゆの寝顔、とっても可愛かった。今までも何度かお泊まりはしたことがあったけどホテルで見たみゆの寝顔はとても特別なものに感じた。
私はみゆのことが好き。大好き。愛してる。
そう聞くと、みゆは首を横に振った。
良かった〜。みゆに彼氏が居なくて。
私は安堵した。「ん?どーかしたの?」
「ううん!なんでもない!」
思わず笑ってしまった。
みゆを彼女にするのは私なんだからっ。
「えっ!?今、なんか変なこと考えてなかった!?」
「全然、考えていないよ〜」
小学生の頃からみゆと一緒に居るけど告白する勇気が持てなかった。今年こそみゆに告白しよう、告白すらできないような展開になる前に。
そんなことを考えているうちに授業が始まった。
放課後になった。今日もみゆと一緒に帰ろうと思い、話しかけようとした時だった。
「ねぇねぇ!カラオケ行かない!?」
クラスの女子達がみゆと一緒にカラオケに行くという話をしていたのだ。
私もみゆと一緒に行こうと思い声をかけた。
「あの……その……」
しかし緊張して上手く言葉が出てこなかった。
すると私の思いが届いたのか、みゆがこう言った。
「あっ、あゆちゃんも行かないっ!?」
みゆありがと〜〜〜〜。私は心の中で唱えた。
そして、クラスメート達とのカラオケを楽しんだ。みゆの歌声はとっても綺麗だった。
帰り際みゆと話をしていた。
「楽しかったね〜」
「そうだね!」
いつも通り楽しく会話していた。みゆと別れた後、私は家に帰り、自分の部屋に戻ってみゆとの会話を思い出して1人悦に浸っていた。
次の日、教室に入ると既にみゆが登校していて席に座っていた。
「おはよう♪」
私は元気良く挨拶をした。
しかし返事はない。
みゆは机に突っ伏して寝ていた。
寝顔、可愛いな……。
思わず見惚れてしまった。
「ちょっとぉ〜聞いてるのぉ〜」
みゆに声をかけた。
すると、みゆは目を覚ました。
「あっ!おはよぅ……」
少し眠そうな顔をしながらこっちを見た。
「ふわぁ~。おはよぅ……」
可愛すぎる!!! 朝からこんな表情を見れるなんて幸せだな〜と思った。「どうしたの?何か良いことあった?」
「いや、特に何もないけど」
まあ、実際にいいことがあったんだけどね。
休み時間、みゆと今週末はどこかに出かけないかという話を私から切り出して話していた。
「ねぇねぇ、どこか行こうよ!」
「いいけど、どこ行くの?」
「じゃあ水族館とかどう?」
「うん、いいよ!」
こうして私たちは今週末に水族館に行くことになった。そこの水族館には観覧車があるんだよね...うん...そこで...
約束の土曜日になり、待ち合わせ場所に向かった。
早く着きすぎちゃったな〜。まだ10分前だし。
みゆはまだ来ていなかった。しばらく待っていると、遠くにみゆの姿が見えてきた。
「みゆー!」
手を振りながら彼女の名前を呼んだ。
「あゆちゃん、おっそ〜い」
「えぇ、もう着いていたじゃん」
「あはは〜、確かに〜」
「も〜、またそういうこと言う〜」
私はちょっと頬をふくらませた。
みゆとはいつもこんな感じでふざけ合っている。
とても楽しい気分になれた。
私たちは電車に乗り、目的地に着いた。
中に入ってみると人が多くて驚いた。
「ねぇねぇ、イルカショーやってるみたいだよ」
そう言われて、イベント情報の看板に書いてあるのを見るとイルカショーがもうすぐ始まりそうだった。
「本当だ!見てみる?」
「うん!見たいな〜」
「よし、決定!!」
私たちは急いで会場へと向かった。
イルカショーが始まり、たくさんの種類のイルカたちが順番に芸を披露していった。
その後ショーが終わり、イルカを近くで見ることができた。「かわいいね〜」
「うん、すごいスピードだったね」
「あれ、絶対怖いよね」
そんな話をしていると、係員さんが私たちを呼びに来た。
「あの、よろしければ写真を撮りますか?」
「はい!お願いします!!」
「じゃあ、こちらへどうぞ」
私はちょっと大袈裟に近づいて頬を近づけてピースをした。その写真は大切に保存することにした。
そのあともいろいろな魚を見たりショッピングをしたりと楽しんでいた。
時間はあっという間に過ぎていき、夕方になっていた。
「ねぇねぇ、最後に観覧車乗らない?」
「うん、いいよ」
ここには水族館なのに観覧車があった。
私とみゆは最後の締めとして観覧車に乗った。遂に、来た...。私は緊張でしばらく黙り込んでしまった。
「なんでそんなボーッとしてるの〜」と声をかけられてしまった。
「えっ!?な、なんでもないよ」
「怪しいな〜。何か隠してるんでしょ」
「な、何にも隠してないし!!」
「本当に〜?」
「ほ、ほんとうだってば!!」
「ふ〜ん。まあいいや」
笑って誤魔化しはしたが内心少し焦っていた。
そして観覧車が半周した頃、私は遂に言った。
「あのさ……」
「ん?どうしたの?」
「実はさ……私さ……」
「私さ……みゆのこと好きなんだ」
言ってしまった……。
恥ずかしさのあまり顔をあげられなかった。すると、
「私も好き……」
という返事が返ってきた。
「え……?」
私は驚いて顔をあげた。すると、みゆの顔は真っ赤に染まっていて今にも泣き出しそうな顔になっていた。
私はその顔を見てドキッとした。
「私もね……あゆちゃんの事が好き……。ずっと前から大好き……」
「え、えっと……」
私はすごく困惑していた。まさか両思いだったなんて……。
「なんだ〜!!良かった!!同じ気持ちだったんだ……」
みゆは嬉しそうな顔になった。
「うん……」
「これからよろしくね!」
「うん!!」
こうして、私たちは恋人同士となった。
夕焼けがとても綺麗だった。
6月に入ったある日のことである。
「ねぇ、あゆ〜。またどっか行こうよ〜」と会話をしている中でこう言われた。「いいけど、どこ行くの?」
「ん〜、そうだなぁ……。遊園地とか?」
「わかった、じゃあ次の日曜日でいい?」
「うん、いいよ!」
私たちは遊園地に行く約束をした。
当日になり、私たちは遊園地へ向かった。
「わ〜!いっぱい人がいるね!」
「うん、今日は休日だから多いかも」
「そっか〜。じゃあ、早く並ぼうよ!」
そう言われて、私は列に並んだ。
しばらく並んでいると、ようやく入場できた。
「わ〜!!すごいすご〜い!!」
見上げるとジェットコースターやら観覧車やらなんか急に落っこちるのとか沢山あった。「ねぇねぇ、どれから乗るの?」
「うーん。やっぱり最初は定番のジェットコースターかな〜」
「だよね!」
私たちは早速乗り込んだ。
そして、私は絶叫系が苦手なのにその場のノリでジェットコースターに乗ろうなんて言ってしまったの後悔した。
「ひぃやぁぁああああああああああぁぁぁ」悲鳴を上げながら必死に耐えた。
「きゃ〜!楽しかった!!」
隣に座るみゆはとても笑顔になっていた。
「うん……、みゆはそんな平気だなんて凄いね...」「えへへ〜」と照れ笑いをするみゆ。可愛い。
「次はどこにする?」
「じゃあ、コーヒーカップに乗ってみたい」
そう言われて私たちはコーヒーカップに乗った。
とても楽しい時間だった。
その後、メリーゴーランドなど色々な乗り物を体験し、遂にあの登ってから急に下るやつの名がみゆの口から出てしまった。「あゆちゃ〜ん。あれ乗ろうよ〜」と指差す先はフリーフォールという奴だった。
「え?ちょっ、ちょっと待って!!それだけはダメだよ!!」
「大丈夫だって!怖くないよ?というか最初真っ先にジェットコースター乗ろうとか言ってきた癖に」
「あ、あれはノリで何も考えず言っちゃったから...」
「え〜、じゃあやめとく?」
「う、う〜ん」
私は首を捻った。
「よし、覚悟決めた、行こう」
みゆは驚いて
「大丈夫なの...?」と言ってきたが私は「多分...」と返しておいた。
そして結局並ぶことにした。
「ねぇ、あゆちゃん。これ終わったら何に乗りたい?もうすぐ終わりだけど」
「う〜ん。まだあんまり考えてないけど……」
「そっか〜」と話しているうちに順番が来た。
私たちは係員さんの指示に従って座席に着いた。
「お二人様ですか?」と言われ、「はい」と答えた。
「では、出発しまーす!!」係員さんが言う。
「はいっ!!」とみゆが言う。みゆはこういうときに返事をするタイプなんだよなと私は思った。
そして、ついに始まった。
高い高いタワーをゆっくりとゆっくりと登って行った。私は泣き目になりながらみゆの方を見たが、みゆは「大丈夫大丈夫、一瞬だって」と言ってくれた。私は「ま、まあそれは分かってるけど...」と返しておいた。
遂に1番上まで登ってしまった。私は咄嗟に目を瞑った。そして突然来る体が浮く感覚。
「あああああぁぁぁ!!!!」私は無意識に叫んでしまっていた。終わってみるとみゆはとても楽しそうにしていたが、私は少しぐったりしてしまった。みゆが「あそこのベンチで休憩しようか」と言ってくれた。
「うん……」
私たちはベンチに座って休んだ。
すると、みゆは私の手を握ってくれて言った。
「あゆちゃんの手冷たいね」「え、そっちこそ温かいよ」と言うと、二人で笑っていた。
しばらくして、私たち二人は立ち上がった。
「もう少しで日が落ちそうになってきたね」
みゆは「最後はどこに行こうかって話だけど、やっぱ最後は観覧車でしょっ、王道だしね」と言った。「そうだね」頷いて言った。
私たちは観覧車に向かった。
並んでいる間も話は尽きなかった。
「ふぅ〜。やっと乗れたね」
私はそう言って窓の外を見上げた。
夕焼けで綺麗に染まっている空があった。
隣を見るとみゆの目が輝いていた。
「きれい……」と呟いた。確かにその通りだった。
私たちは暫くの間ずっと眺めていた。
「あ〜、楽しかったね!」
遊園地を出て、家に向かっている途中だった。
「うん、楽しかったね」
「また行きたいね」
「そうだね」
「今度はどこ行こうかな〜」
「今帰ってる途中なんだけど、気ぃ早すぎ〜」
「えへへ〜」
今日は本当に楽しかった。
また一緒に行こうと思う。
でも、今はこうして手を繋いで歩いているだけで幸せだ。
「あ、あゆちゃん。見てみて!」
「ん?」
私はみゆが指さした方向を見る。そこには小鳥たちが仲良さげに肩を寄せ合っていた。
「あ、可愛い〜」
「だよね!あそこだけなんか平和って感じだよね」
「だね〜」
私たちはしばらくそれを見て和んでいた。自然と私の手はみゆの手に伸びていた。手がみゆの手に触れる。
「あ、ごめん」
私は慌ててみゆと繋いだ手を離そうとした。しかし、みゆはギュッと握ってきて「もっと強く握りたいから、このままにしてて」と言われた。
私たちはそのままの状態で歩き始めた。
「ねぇ、あゆちゃん。私たちって結構お似合いだと思う?」
「え?ど、どうだろう……?....結構いいコンビだと思うよ」私は答えた。「ふ〜ん、そっか……」
それから、特に会話もなく歩いていった。
やがて、分かれ道に辿り着いた。
私は右でみゆは左の道へ行く。
「じゃあ、バイバ〜イ」
みゆは笑顔で手を振った。
私は「ばいば〜い」と返した。
みゆの背中が見えなくなるまで見送ってから、私は帰路についた。
私が帰ったときにはもう7時を過ぎていた。
お母さんが「おかえり」と出迎えてくれたので、私は「ただいま」と言い、自分の部屋に戻った。そしてベッドの上に寝転がった。私たちはネットではあまり喋らないようにしようと決めていた。なぜならネットで喋りすぎてしまうと実際に会って喋る意味が薄れてしまうと考えたからだ。私はスマホをいじっていたのだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
「……ちゃん!……あゆちゃん!!」という声が聞こえてきた。私は起き上がって、「ん?」と言った。
すると、みゆの声が返ってきた。
「もう、お昼だよ?早く行こっ」
なんだか様子がおかしい。寝た時は夕方でもう今昼?そしてここどこ?と思い、周りをキョロキョロと見渡していると、みゆが「ほら、行くよ〜」と言ってきたので、私はみゆについて行った。
着いたところは可愛いいろいろなぬいぐるみが座っている奇妙な場所だった。ステージのような場所にみゆに連れてこられた。私が困惑していると私の身長より少し大きいぐらいのバカデカいウェディングケーキが運ばれてきた。みゆは「ほら一緒に食べよっ」と言ってきた。
ここでハッと目が覚めた。お母さんのご飯ができたという声がする。どうやら夢を見ていたらしい。途端に私は夢の内容を振り返って赤面してしまった。「あゆちゃ〜ん。何やってるの?早く降りてきなさいよ〜」
お母さんはそう言って下に降りていった。
私は「はーい」と言って一階に降りた。
食卓には美味しそうな料理が並んでいた。
お母さんは「今日はちょっと豪華よ」
確かに今日はいつもより品数が多い。
妹のひなも「ちょっと多すぎない?」と言っていた。お父さんはまだ帰っていないみたいだ。
私は席に座り、いただきますをして、食べ始める。
「うまっ」
思わず口から出てしまった。
「あら嬉しいわね〜」
お母さんは嬉しそうにしている。
妹は「そういえばさ、最近彼氏と上手く行ってるの?」と言ってきた。途端に私は喉に何かを詰まらせて噎せてしまった。「か、彼氏ぃ〜?」私は聞き返した。
「うん、だってこの前遊園地に行ったんでしょ?あ〜、デートね、デート!いいなぁ〜」
ひなは羨ましがっている。
「な、なんのことかな〜?」私はとぼけてみる。
「あ〜、図星だ〜。やっぱりそうだと思ってた。」
「むむむ」
私は妹に言い返す言葉が見つからなかった。
「それでどんな人なの?」
「えっと……」
私は答えに困ってしまう。
「顔とか性格とかいろいろあるじゃん!」
「ん〜、優しい?」
私は適当に応えた。
「え〜、それだけ?」
「秘密〜!そこまで深堀しないでよ〜」
と私は言った。
「ちぇ〜」
妹は不満げだったが納得してくれたようだ。
食事中、お母さんが「あゆちゃん、進路は決まった?」と聞いてきた。
「あ、まだ」
「そう。そろそろ真剣に考えないとダメよ」
「分かってる、分かってる...うん分かってるから」
「ふぅん、それなら良いけど……」
私は母の言葉を聞き流し、味噌汁をすすりながら窓の外を見た。外はすっかり暗くなっていた。そろそろ夕飯を食べてお風呂に入って寝ようと思い、食器を流しに持っていった。「ご馳走さま」
私が言うと、お母さんは「はいよ」と返した。
私は自分の部屋に戻り、ベッドに飛び込んだ。
スマホを開くと、通知が来ていた。
「あゆちゃん、今から通話してもいい?」
「うん、いいよ」私は返事を返し、イヤホンをつけて、電話に出た。
『もしもし?』
「もしもし、みゆだけど」
「知ってる。どうしたの?」
「あの、特に用事はないんだけど、なんか話したいなって」
みゆは照れくさそうに言ってきた。
「そういう時あるよね、分かる」
私は返した。
「でしょ?だからこうして電話してみた」
「可愛いねぇ」
私はみゆを揶揄ってみた。
「か、可愛くないし!//」
恥ずかしがっている。可愛いいいい〜。「みゆホントに可愛いもん」
「またそんなこと言って、もうっ」
怒った口調だが声色からは怒気を感じない。むしろ喜んでいるように聞こえる。
「みゆ、明日空いてる?」
「ん?大丈夫だよ」
「じゃあ買い物行かない?」
「いいよ〜どこに買い物へ行くの?」
「ショッピングモール」
「分かった。待ち合わせは何時にするの?」
「10時半くらいでどうかな?」
「オッケー、というか今日遊園地に行ったのに早速次の日は買い物?」笑いながら言った。
「別にいいでしょー」
「いいけどねー」お互いに笑った。
「じゃあ、ばいばーい」
「うん、じゃあねー」
私は通話が切れたことを確認し、枕に顔をうずめた。
それから風呂に入り歯を磨き、いろいろ終わらせてからまた布団に戻った。
私はみゆが好き。みゆも私が好きでいてくれている。
でも時々不安になる。
みゆは本当に私のことが好きなのか? 私はみゆのことが好きだ。
それは間違いない。
でも、もし、本当は好きじゃないなんて言われたら……。
私は怖い。
いや、そんなこと考えたって仕方がない今を楽しもう。そう自分に言い聞かせて眠りについた。
次の日、目が覚めると既に9時を過ぎていた。急いで支度をして家を出た。ショッピングモールには何とか間に合いそうだ。
電車に乗っている最中、昨日のことを思い出し少し憂鬱になった。
私はみゆが好き。
みゆは私を好きでいてくれる。
信じたい。
でも、疑ってしまう自分が嫌だ。
早く着かないかな。
私は、駅に着くと早足で改札を通り抜けた。ショッピングモールにつくとみゆがもう着いていた。
「あれ〜、今まだ予定より10分前だけど早いねみゆ」
「まぁ楽しみにしてたからさ〜」
「へぇ〜」
「あゆちゃんは?」
「私も楽しみだったよ」
「そうなんだ〜」
「とりあえず入ろうよ」
「うん!」
私たちは店内に入った。休日ということもあり、人は多かった。
「人多いね〜」
「うん、やっぱり日曜日だしね。何か買いたいものとかある?」
「特にないかも〜」
「そっか」
会話をしながら歩いていると、アクセサリーショップを見つけた。
「ここ入ってみたいかも〜」
「おっけー」
中に入ると様々な商品があった。
「お互いに似合いそうなものを見つけて来てプレゼントするって言うのはどう?」みゆが提案してきた。
「いいかも!」頷いて言った。「じゃあ、決まり!30分くらいで探して来てここで集合しよう」
「オッケー」
私はみゆと別れて、ぶらついているとネックレスのコーナーに着いた。
「おぉ……」
私は思わず感嘆の声を上げた。
いろいろな種類のものがあり、どれも綺麗なものばかりだった。
私はその中でピンク色のハートがついたネックレスを選んだ。値段は1000円ほどだった。
私はそれを手に取り、みゆの方を見た。みゆはまだ来ていないようだったので、会計を済ませ、先に待っておくことにした。
しばらくすると、みゆが来た。
「ごめんなさい、遅れちゃった」
「大丈夫だよ」
「で、あゆちゃんはどんなのを買ったの?」
「これにした」そう言って私は手にとったピンクのハートのネックレスを見せた。「あっそれ可愛いね」
「でしょ!みゆが選んで来た物は?」「これ」みゆが選んだものは、星型のペンダントトップがついているものだった。
「可愛いじゃん」
「でしょ!まず最初に私があゆちゃんにこのネックレスかけてあげるよ」
「うん」
私は少し頭を下げる。「はい、これでよしっと」
「ありがとう」
「次はあゆちゃんが私にやって」
「分かった」
「お願い」
「任せて」
私はみゆの後ろに回り込み、首元に手を伸ばす。
「ちょっとくすぐったいかも」
「ちょっとドキドキしちゃわない?こういうの」笑いながら言った。
みゆの首に手を回す。
「ふぅ……できたよ」
「ありがと」みゆは手鏡で確認している。
「どう?」私は聞いてみた。
「いい感じだよ」みゆは微笑んでいる。
「あゆちゃんのもいい感じ。めちゃくちゃ似合ってる」改めて言われると凄い恥ずかしい。「じゃあそろそろいこっか」
「うん」
私たち二人は店を出て歩き出した。
「これからどこ行くの?」
「う〜ん、適当にブラついてみる」
「おっけー」私は返事をした。そして、私たちはいろんなところを回った。
雑貨屋さんでは二人でおそろいのマグカップを買ったり、服を見て回ったりした。
時間はあっという間に過ぎていった。
気がつくと時刻は3時になっていた。
「そろそろ帰らないと行けないね」
「そうだね」私たちはショッピングモールから出て帰路についた。
帰り道、私とみゆは他愛もない話をしていた。
「そういえばさ、昨日のみゆなんか変だったよね。私が告白する前からずっとボーッとしてたっていうかさ」
「えっ!?そ、そうだったかなぁ」みゆはちょっと焦ったような笑ったような感じで答えている。
私はみゆの目を見つめた。
「まさかみゆ、私がする前から私とそういう展開にになることを想像してたりして」
みゆの顔が少し赤くなっていくのを感じた。
「....」みゆは俯いている。図星らしい。
「そっか」私は話題を変えた。
「じゃあさ、明日暇?カラオケとか行こうと思っててさ」
「あっ、明日か〜、明日は平日だから時間無いかも」
「そうなんだ〜」残念そうにしている私の様子に気付いたのか、「また今度一緒に行こうね」と言ってくれた。
「うん!」私は笑顔で返した。
「あゆちゃんはさ、いつも楽しそうにしてるから羨ましいよ」
「そうかなぁ」
しばらく沈黙が続いた後、みゆは真剣とも冗談とも取れるような妙な表情で言ってきた。「あゆちゃんは私の事好き?」私はもちろん「大好きだよ!」と元気よく答える。
「よかった」
みゆはとても嬉しそうな顔をして笑っていた。
その顔を見てるととても幸せな気持ちになった。
しばらくして分かれ道に来たのでそこで別れた。
家に帰ってからもあの時のみゆの言葉が頭から離れなかった。
「あゆちゃんは私の事好き?」
「大好きだよ!」
この言葉を聞いてみゆはどんな事を思ったのだろうか。
「良かった」
この一言を聞く限りだと、みゆはきっと喜んでくれていたはずだ。
しかし、それはただの希望的観測に過ぎないのかもしれない。
本当は迷惑だと思っていたのではないだろうか……。
みゆが私のことを好きなのは知っている。だからこそ分からないのだ。
みゆが何を考えているのか。
恋とはなんなのか……。それすらもよく分かっていない。
ただ一つ言えるのはみゆのことを好きだということだけなのだ。
私は自分の想いをノートに書き留めることにした。
夜寝るの決まった時間に書きたい時に書くことにした。『みゆのことが好きです』
『みゆが傍にいてくれればそれだけで幸せです』
『みゆが困っている時は助けたいと思います』
『みゆの笑顔を見ると胸がドキドキします』
「よし!これでOKっと」
私は満足気にノートを閉じる
7月の夏休みに近いある日の事である。
今日も学校に行き、授業を受けて下校している。
私はある人物と待ち合わせをしている。
そう……みゆだ。
私はみゆと二人で一旦家に帰った後に会う約束をしていた。
最近になって、みゆと二人きりになる機会が多くなった気がする。
初めはほんの些細なことだった。
例えば、お昼休みに一緒に弁当を食べるようになったり、放課後に少しの間一緒に帰ることが多くなったりした。
他にも、みゆと話すときに目を合わせる回数が増えたように感じる。
最近ではみゆと目が合うたびにドキッとする。
今まではこんなことはなかった。
私はみゆと話すときは自然体で話せるように努めてきた。
それに、私はみゆと付き合っている。
だから、私はなるべく普段通りに接するように心掛けているのだが……。
なぜか最近はうまくいかないことが多い。
みゆのことを考えてしまうとどうしても落ち着かない。
まるで、心臓が暴れまわるように鼓動を打つ。
最初は疲れてるだけだと思ったけど、日に日に落ち着く時間が遅くなっている。
このままではいつか取り返しがつかないことになるのではないかと考えることがある。
そんなことを考えているうちに約束の場所に着いた。
「ごめんね、待った?」
そこには、私服姿のみゆがいた。
「ううん、今来たところ」
みゆは優しい声で答えた。
「じゃあ行こっか」
私はみゆと一緒に歩き始めた。
「どこに行くの?」
「ん〜、そうだなぁ。あ、あそこの喫茶店とかどう?」
「いいよ〜」
私たちは喫茶店に入った。
席につき注文を済ませる。
しばらくすると飲み物が来たのでそれを飲んだ。
「美味しいね」
「うん」
私はさっきから緊張していて味がよく分からなかった。
沈黙が流れる。
何か話題はないかな、と考えていると、みゆの方から話しかけてくれた。
「あゆちゃんってさ、最近私のことばっかり考えてるでしょ?」
突然の発言だったので私は動揺した。
「えっ!?」
「ふふ、図星でしょ?」
「うん……」
「やっぱりね〜」
「どうして分かったの?」
「だって最近のあゆちゃん、私のことしか見てないんだもん」
最近みゆとよく目が会うなと思っていたのは私が無意識にみゆの方を見てたのか...全然気づかなかった。「そ、そうなんだ〜」
「うん」
なんか恥ずかしい……。
私とみゆはそれから他愛もない話をして過ごした。
そして、いつの間にか日が暮れかけていた。
「そろそろ帰らなくちゃ」
「もうこんな時間なんだ」
「うん。みゆは大丈夫?」
「平気だよ」
「良かった」
私達は会計をして店を出た。
帰り道の途中、みゆが私の手を握ってきた。
私は驚いてみゆの顔を見た。
「こうすれば離れなくて済むと思って」
みゆはそう言った。
私たちは分かれ道に着くまでそうしていた。「また明日学校で会おうね。バイバーイ!」
みゆが元気良く手を振っている。
私は小さく手を振り返した。
私はいつものように自分の部屋でくつろいでいた。
みゆのことが頭から離れないと同時に夏休みのことも心配していた。学校が無かったらみゆと頻繁に会えなくなっちゃう。後夏休みの宿題もあるし...。その時良い案が思いついた。みゆを私の家に招いて一緒に宿題をやればいいんだ!早速明日学校でみゆに話そう。
次の日、そうえば今日は終業式だった。私は学校に着き自分の教室へ向かうと、すでにみゆが来ていた。
「おはよう」
「あゆ、おっはー!」
「ねえ、今日学校が終わったら私のうちで宿題しない?」
「いいよ!あゆの家楽しみだなぁ」
学校が終わり、みゆを待っていた。しばらくしてチャイムが鳴る音が聞こえた。
私は玄関へ行きドアを開けるとそこにはみゆの姿があった。
「こんにちわ〜」
「いらっしゃい。上がって」
みゆを招き入れ私はリビングへと案内する。
そしてソファーに腰掛けた。「麦茶でいい?」
「うん」
キッチンに向かい冷蔵庫からペットボトルを取り出しコップに注ぐ。
「はいどうぞ」
「ありがと」
私はみゆの隣に座った。
「そういう訳で、今日は宿題をするんだけど決めたいことがあって」
「何?」
「私は夏休みの宿題をどうしても先延ばしにしちゃって痛い目を見るっていうのを繰り返してるけどなかなか改善しなくて、だから一緒に毎日うちで宿題を一緒にやって欲しいの」
「なるほど。わかった一緒に少しづつやっていこう」
「ありがと!」
「宿題ってどのくらいあったっけ」
「数Ⅱ、数Bが冊子になったプリントそれぞれ30ページ、20ページに英語が単語100語、に化学、物理がプリントそれぞれ3枚そして読書感想文」
「うへぇ〜多いね。」
「多い」
「頑張ろうか」
「うん」
「じゃあまずは数学から始めよっか」「了解」
こうして私たちは2人で協力して夏休の宿題を進めることになった。
今日はみゆと一緒に図書館に来ていた。
今私たちがしているのは、読書感想文のための本を選ぶことだ。
ちなみに去年は国語の教科書にある夏目漱石の『吾輩は猫である』をやった。
あれはとても大変で、とにかく長い文章を読むのが苦痛でしょうがなかった。しかもその本の内容が「飼い主について行ったら家には誰もいなかったので、仕方なく寝床を探していた」というものだった。正直意味不明だし、共感もできなかった。
「あゆちゃん、これなんかどうかな?」
みゆが差し出してきたのは、太宰治の短編集だった。「うん、それなら読みやすいかも」
私たちはこの小説を借りて読むことにした。
みゆも借りる本を決めたらしい。
家に帰ってから私はさっそくこの本を読み始めた。
しばらくすると、みゆの方から声をかけられた。
「あゆちゃん、ここ教えて欲しいんだけど……」
「どれ?」
私とみゆは勉強をしていた。
みゆは、私の横で数学のプリントを広げている。
「この問題なんだけど」
「ああ、これはね……」
私はみゆが指差した問題の説明をした。
「あっ、そっか……理解できた」
「良かった」
「あゆちゃんはすごいなぁ」
「そんな事ないよ」
「でも私なんかより全然頭がいいと思う」
「みゆだって頭良いじゃん」
「そうかな?」
「そうだよ」
みゆと一緒の時間。
「ねぇあゆ」
「なに?」
「好きだよ。大好き!」
「急にどうしたの?私も好きだけど……」
みゆは突然こんなことを言い出した。
「ふふふ、両思いだね!嬉しいなぁ」そう言って私の膝枕にダイブしてきた。
「まさか膝枕するために突然好きって言ってきた?」
「えへへ〜、疲れちゃった。ちょっと休もう」
「しょうがないなぁ」
「あゆ、大ちゅき♡」
みゆの顔を見つめる。
可愛いみゆの笑顔を見てると私まで嬉しくなって来る。
「どうしたの、じっと見つめちゃって」
「みゆの顔凄い可愛いなと思って」、「やめてよ、恥ずかしい」
「照れてるところもまた可愛くて」
「もぉ〜」
「みゆ、愛してる」
「あぅ……あゆ、ずるいよ」
「ねぇ...みゆ、キス...しない?」
私は幸せで頭おかしくなってこんなことを口走ってしまった。「うん」
みゆは顔を真っ赤にしてうつむいたまま答えた。
私はみゆを抱き寄せて唇を重ねた。
甘い匂いがする。
気持ちいい。
息ができない。苦しい。
それでも私はみゆを求める。
とってもとっても幸せだった。
そして夏休み2日目、私たちは今日の分の宿題を終わらせた後、夏休みにどこかへ行こうという話をしていた。みゆが「海行きたい!」と言ってきた。「海!?」
「うん、海!水着着れるし」
「まあいいけど、あんまり人多くないところが良いな」
「じゃあ、ちょっと遠出しようよ!」
「遠くても大丈夫?」
「もちろん!」
「ここらでちょっと遠くて綺麗で人少ない海って言ったら伊豆かな」
「じゃあ決まりだね」
「あのさ、どうせならホテルに泊まってみない?2人で」
「えっ、ああ、いいけど親がなんて言うか...」
「幼なじみと2人でって言ったらきっとOK出るって!」
「分かった!」
私たちはこれから受験で来年の夏休みはこんなことできないことと幼なじみと2人だから大丈夫という武器を使って何とか親を説得することができた。
そしてしばらく経ったある日私たちは電車に乗って伊豆へ向かった。
「結構遠いね」
「うん」
「ところであゆちゃん」
「ん?どしたの」
「手、繋いでもいい?」
「うん」
みゆは私の手を優しく握って来た。とても柔らかい感触が伝わってくる。
「みゆの手、すべすべしてる。女の子らしい」
「そういうこと言わなくて良いから!」
「ごめん笑」
私たちは恋人繋ぎをして電車に座っていた。「次降りるよ」
「うん」
駅に着いた。
改札を出て、バスに乗る。
「どのくらいかかるんだろ」
「10〜20分位じゃないかな」
「そこそこだね」20分ほど乗って目的のバス停に着く。
そこから歩いて15分程度で着く。
私たちは海岸に来ていた。
「結構綺麗なところじゃん」
「そうだね。とりあえず海の家行こっか」「おーけぃ」
海の家に行く途中、あるカップルを見つけた。
男の人は優しそうな顔立ちをしていた。その男の隣にいる女の人の見た目はとても可愛くスタイルも良い。
私はみゆのことをチラッと見た。まあ、みゆには及ばないけどね。
「どうしたの?」
みゆも気になったのかこちらを振り向いてきた。
「ううん、なんでもないよ」
「そう?それならいいんだけど」
その後私達は海の家に行き昼食を食べてから海の家の更衣室で水着に着替えた。「どう?似合ってる?」
みゆは水色のビキニを着ていてとても可愛いかった。
「めっちゃかわいい!」
私は青色の花柄のビキニだ。
「あゆちゃんも、凄い可愛くて良いと思うよ!」
「ありがと」
「さ、泳ご!」
みゆは私に手を差し伸べる。
私はみゆの手に掴まり海の中へと入っていく。
「冷たくて気持ちい〜」
「ほんとだぁ」
みゆは私を後ろから抱きしめて来た。
背中に伝わる柔らかな胸の感覚。
心臓の鼓動が早まる。
「ちょ、ちょっと何してるのみゆ」
「えへへ、良いでしょ〜」
みゆはギュッと力を込めてくる。
「苦しいってば」
「えぇ〜しょうがないなぁ」
みゆは力を緩めた。
海は透明感があって凄く綺麗だった。波が打ち寄せてきて足に当たる。
気持ちいい。
「みゆ!あそこの岩まで競争しようよ!」
「いいよ!負けても文句なしね!」
「もちろん!」
私はみゆの手を引いて走り出す。
「行くよ!せーのっ!」
みゆの方が少し早かった。
「後少しだったのに〜」
「ふふん♪まだまだ甘いねぇ」
「もう1回勝負!」
「おっけーい」
「じゃあいくよ!せーの!」
今度は私が勝った。
「やった!勝った!」
「ぐぬぅ……」
「これで1勝1敗だね!」
その後もめいいっぱい遊んだ。時には砂浜で穴を掘ったり、波が来るところで一緒に座って波を感じたりした。気づけば日が暮れていた。
「そろそろホテルに向かおうか」
「そうだね」
ホテルはここから歩いて20分程度の場所にあった。
「疲れちゃった」
「早くホテルに行こう」
私たちは歩き始めた。その時、目の前の曲がり角を曲がってきた男がいた。
その男は私たちを見ると急に立ち止まった。
「あっ…………」彼は声を漏らすとそのまま走ってどこかに行ってしまった。
「今の人知ってるの?」
「うん、同じ中学の人だった」
その男の名はすっかり頭から消えていたがこの出来事で少し思い出した。
確か名前は"高橋 裕也"(たかはし ゆうや)とか言ったかな。
みゆは彼について語り出した。
「あの人とは中2の時に知り合ったんだ。そしてさ、その夏の頃に告白されちゃって」
「えー!告白されたことあったんだ」
「断ったけどね」
「私、その頃もみゆと一緒だったけど全然気づかなかったよ」
「向こうも誰にも言わずに秘密裏に告白してて奇跡的に誰にも気付かれず噂にもされずに終わったんだよね」
「そうだったんだ」
みゆに告白する前はみゆはすっごく可愛いからさっさと告白しないとすぐ先を越されちゃうなんて思ってたけどもう既に告白されていたとは。
私は無意識に後ろからみゆに抱きついた。「わぁ、びっくりした」
「みゆのこと大好き」
「あ、ありがとう。もしかして私が告白された話を聞いて嫉妬しちゃった?」
私の顔が真っ赤になったのが自分でも良く分かった。私は無言のまま頷く。「あはは、あゆちゃんは可愛いなぁ」
そう言いながらみゆは私の頭を撫でてくれた。
「んふ〜」
私は目を細める。
とても心地よい気分だ。
みゆと付き合い始めてから3ヶ月程が経過している。最初は私とみゆは付き合う前と同じように接していたのだが、最近になってやっと恋人らしいことも増えてきた。
例えば手を繋いだり、キスしたり……。
「あ、ほらホテル見えてきたよ」不意にみゆが声をかけてきた。「ほんとだ!なんかワクワクしてきたかも」
みゆと私は駆け足になる。
海沿いにある白い建物が見えてくる。
あれが今日泊まるホテルだろう。
私たちはホテルに入った。ロビーには誰もいない。フロントにいる人は1人だけいる。
私と彼女はカウンターまで行った。
「いらっしゃいませ」
「予約している高柳です」
「かしこまりました。ではこちらの用紙の必要事項をお書きください」
「はい」
「ご記入終わりましたでしょうか?」
「大丈夫です」
「それではチェックインさせていただきますね。お部屋番号は704になります」
鍵を受け取った。
「ありがとうございます」
エレベーターに乗って部屋の階に行く。
7階に着き廊下を歩く。
「ここだ!」
みゆと一緒に部屋に入る。
窓の外の海が見える綺麗な和室だった。
「凄ーいいい眺めだね〜」「そうだね〜」
荷物を置いて窓から外を見る。
「ね〜みゆ〜」
「どしたの?」
私は甘えた声で話しかける。
「ぎゅーってしてぇ♡」
「ふふっ、いいよ」
そう言ってみゆは私に近づいて抱きしめてくれた。こんないい眺めの部屋でハグをするなんて私はなんて恵まれているのだろう。私はみゆに体重をかける。
「んへへ……幸せ……」私は思わず声が漏れた。
「私とハグしてんだから当たり前でしょっ」みゆが言った。「...うん...」
「じゃあそろそろご飯食べに行かない?」
「賛成」私たちは着替えてからホテルのレストランに向かった。メニューを見て注文する。
「美味しいね」みゆが言う。「うん」私は答えた。
食事を終えた私たちは自分たちの部屋に戻った。
「さてと、次はお風呂だね、ここは露天風呂で海が見えるんだって!」私が言った。「楽しみだね」
「うん」
私たちは大浴場に行った。
脱衣所で服を脱ぐ。
「あゆちゃんの体綺麗だよね」
「えっ!?」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「も〜、照れちゃって」みゆが笑って言った。みゆは可愛いなぁ。
本当に愛おしくてしょうがない。
私とあゆは浴槽に浸かる。
「ねぇ、みゆ」
「ん?どしたの?」
「私ね、今すっごく幸せなんだ」
「さっきからずーっとそれ言ってるね」
「ずーっと言ってちゃダメ?」
「ううん、全然、もっと言ってもいいよ
。でもさ、あゆちゃんはそんなに私のこと好きなんだ」
「そりゃもちろん」
「そっか、嬉しい」
みゆは笑顔を浮かべた。
「みゆはさ、私と付き合って良かったと思う?」
「思う」
「即答じゃん」
「だってあゆちゃん可愛いもん」
「なんか恥ずかしいなぁ」
「それに優しいし」
「それはみゆもだよ」
「あと料理上手だし」
「それもみゆも同じだね」
私はそう言いながらみゆのお腹を触った。柔らかい。私はみゆの肩を抱くようにして体を密着させるように抱き寄せた。みゆは顔を赤く染めている。可愛いなぁ、みゆは。
「あ、いきなりそういうことするのズルい!」とみゆが言ってきた。
「えへへ〜、だってしたくなったんだもん」
「それなら私にだってすることがあるんだからね」そう言ってみゆはキスをしてきた。そして舌を入れてきた。私とみゆの顔の距離はゼロになる。
「はぅ……み、みゆってば大胆……」
「別にいいでしょ、私たち付き合っているんだから」
そこから少し浸かったあと、私は言った。
「ねぇ、そろそろ外の露天風呂行かない?」
「うん!行こうか」
私たちはお風呂から出た。タオルを体に巻いて廊下に出る。階段があって、それを登っていくと、そこには景色が広がっていた。目の前は海が広がっている。水平線まで見渡すことができる。とても素晴らしい光景だ。私たちは露天風呂に入る。湯船には先客がいた。大学生くらいの女性グループだった。「わーすごーい」「綺麗ー」などという声が聞こえる。彼女たちはとてもテンションが高い。私もテンションを上げることにした。みゆと手を繋いで露天風呂に入ったり、お湯を掛け合いっこしたり喋ったりしてるうちにあっという間に時間は過ぎていった。
「ふぅ……楽しかったね〜」
「そうだね〜」私たちは大浴場から出て、部屋に戻った。私とみゆは布団の上で座っていた。
「今日はどうだった?」私は尋ねる。
「すっごい楽しかったよ、あゆちゃんは?」
「うん、すごくよかった」私はみゆを抱き寄せる。
私は自分の唇でみゆの口を塞いだ。それからしばらく私たちはキスをした。
長い時間が経った頃私たちはお互い満足したので口を離した。私が言う。
「じゃあもう寝ようかな……」
みゆが隣で言う。
「もっと顔近づけて、ハグしながら寝よう」
「う、うんいいよ」
私はドキドキして体感2時間くらい寝られなかった。みゆの寝顔は凄い可愛かった。
私はドキドキし過ぎてしっかり寝られるのか不安になっていたがちゃんと寝られたらしい。目が覚めるとみゆの顔がすぐ近くにあった。みゆは微笑みかけてくれる。私もつられて笑顔になる。
「おはよう」私が言うと、みゆは返事の代わりにキスをしてくれた。
みゆとのキスはすごく幸せだった。唇を重ねるだけの優しいキスだったが、私はこの上ないほど満たされた気分になった。
「朝ごはん食べに行こうか」私は言った。「うん」
私たちは食堂へ向かった。朝食はバイキング形式だった。私は適当にサラダやフルーツなどを取ってきた。「あゆちゃんはいつも健康的な食事だよね」みゆも料理をたくさん取ってきていた。「うん、野菜とか好き」
「私も好きー」
それから食事を済ませて部屋に戻った。
「今日はどこに行くの?」みゆが言った。
「今日は伊豆を観光する予定だよ。」
私は答える。
みゆは楽しみにしてる様子だった。
私達は城々崎海岸へ向かった。バスと歩きで30分程の場所にあった。「ねぇ!見て!」みゆは海に向かって叫ぶ。
「わぁ……綺麗…………」みゆが感動しているのを見て私は嬉しかった。
みゆが私の方を向く。私はみゆと目を合わせた。すると彼女は照れたような顔をする。そんな顔もまた可愛いかった。
「ほら、みてあれ、大吊橋だよ!」
「ホントだ!渡ってみよ!」
みゆがテンションを上げて言ってくる。こういうところは子どもっぽいなと思うけどそういうところがまた可愛らしいと思う。
私たちは二人で吊り橋の渡り始めの場所まで来た。みゆが私の方を見る。私は彼女に見惚れてしまう。横を見るとそこには絶景のオーシャンビューが広がっていた。私はみゆの方へ体を寄せた。ここへ来て私の怖がりが発動してしまった。
「あゆ?」
「ちょっと..怖い」
私はみゆの手を強く握る。
「ほら、渡るよ」みゆが言った。
私たちを乗せた吊り橋はゆっくりと進んでいく。私は恐怖と不安で胸いっぱいになっているのを必死に隠しながら、平然な態度をとっているつもりだったのだが、みゆにバレているのかわからない。だけど、もしそうなら嬉しいと思った。
みゆが私の手をぎゅっと握り返してくる。それに応えるように私も強く握り返す。そして、その手を恋人繋ぎにする。お互いの体温を感じることができる。それが心地良い。私はこんなにも安心感を得られることを初めて知った気がした。それはきっとみゆと一緒にいるからだろう。
みゆのことが好き。愛おしいと思っている。
「海が凄い綺麗」みゆが言った。「ホントだ、来て良かった」私も答えた。
「そろそろ着くね」みゆはそう言い、私を見た。
「そうだね」
そして私たちは無事に大吊橋を渡り終えた。
渡り終えた場所は岩が多くある場所だった。
「岩の上で休憩しよ」
みゆが言う。
「いいね」私が同意する。
私たちは岩に座ってしばらく景色を眺めていた。
「なんかここ落ち着くわ」みゆが言った。
「なんでだろ……」
私は少し考える。
「多分、潮の匂いがするからかな?」
「なるほどね」
「ねぇあゆ、これからどうしようか」
みゆが尋ねてきた。
「うーん、とりあえずどこかでご飯食べようよ」
「どこで食べるのかは決めてないの?」
「そこら辺は行き当たりばったりで行こうかと思って」
私は答える。
「あ、近くに海が見えるカフェがあるみたいじゃん。そこ行こうよ」
「え、ほんと?じゃあそこしよっか」
私たちは今からそこに行くことにした。
海沿いの道を歩いていると目的の店を見つけた。
「ここみたい」みゆが言う。
「うん」私は返事をした。
店内に入ると店員さんに声をかけられた。「何名様ですか?」
「二人です」みゆが答える。
「こちらのお席にご案内いたします」
私達は席に着いた。
「メニューをお持ちしました」
「ありがとうございます、これお願いします」
「じゃあ私はこれで」
みゆと私はは注文をする。
「かしこまりました、少々お待ちください」
私はふと外をみる。
そこには綺麗な海が広がっていた。「わぁ……綺麗」思わず声が出る。
「確かに、めっちゃきれい」みゆも賛同してくれる。
それからしばらくして料理が運ばれて来た。とても美味しかった。
「よし、じゃあそろそろ帰ろうか。確かこの辺に駅があったはず」
「お土産はどうするの?」
「ここから20分くらい歩いたところに駅とお土産さんがあるみたいだからそこで買おう」
「わかった」
会計を済ませてから私達は歩いて駅まで向かう。
「ねぇ、手繋ごう」みゆが言ってきた。
「うん」私は彼女の手をギュッと握る。「……///」みゆは黙り込んでしまった。
「あゆ、好き」
みゆが小声で呟く。
「知ってる」
「……バカ」
彼女は私の方を向いて、唇を重ねようとしてくる。
「もう、いきなりやめてよね。こんなところで」私は恥ずかしさを隠すために怒ったふりをしてみた。
「だってあゆが悪いんだもん」
「なにもしてないでしょ」
「いつも可愛い顔見せてくれるから」
彼女が微笑む。
私は照れくさくて目を逸らす。
「みゆの方が可愛いよ」
そうこうしているうちにお土産屋さんまで着いた。「みゆ、どれにする?」
「やっぱりここは食べ物がいいと思うんだけど」
「じゃあそれで決まりだね」
私はクッキーとチョコを買うことに決めた。
みゆの方を見ると、何かを手に取ってじっと見つめている。「みゆは何を買ったの?」私は尋ねた。
「しっとりした生チョコレートケーキってやつ」
「へぇー、美味しいといいね」
「そうだね」
みゆが笑顔になる。「あ、あとこれ」
みゆは手に持っていたものを渡してきた。
「ん?スマホカバー?」
「うん、あゆとお揃いのが欲しくて」
「私に買ってくれたの?」
「うん!」
みゆはとても嬉しそうな顔をしていた。
それから駅へと向かい、電車に乗った。
電車に乗るとみゆは疲れたのか眠ってしまっていた。私はそんな彼女を起こさないように優しく抱きしめながら窓の外を見る。
窓には私達二人の姿が映っていた。
そしてその背景には青い空が広がっている。
私にとって、今この時が一番幸せだった。
家に帰って私の部屋に着くと今まで平静を装っていたがホテルでみゆと寝たことを思い出してしまっていた。
みゆの寝顔、とっても可愛かった。今までも何度かお泊まりはしたことがあったけどホテルで見たみゆの寝顔はとても特別なものに感じた。
私はみゆのことが好き。大好き。愛してる。