RED&BLACK

森の中では何が起こるかわからない。山賊や獣たちが襲ってくる可能性も否定できない。その際に自分の身を守れなければ待ち受けるのは「死」のみだ。

そのことはこの家で暮らし始めた頃、ユーゴたちに説明を散々されていたのだが、重い剣や銃の扱いはずっと雑用しかしてこなかったシェラにとっては退屈ではないものの、辛いことには変わりなかった。

「シェラ、ちゃんと特訓はしなきゃダメよ！」

「そうよ。きちんと特訓をしないとご飯なしよ？」

アーシャとジベットも言い始め、食事を食べられないのは嫌なシェラは渋々「……やるわ」と言った。決して自分のためではない。ご飯のためである。

その時、バタバタと大きな音を立てながらユーゴが入ってくる。その手には不気味なほど黒い紙が握られていた。

「お帰りなさい、ユーゴ」

ユーゴの顔はいつもより険しいものになっており、シェラは緊張を覚える。ローランが「どうしたんだ？」と訊ねると、彼は黙ったまま机の上に持っている紙を開く。

「えっ……何だよこれ！」