気付いてよ
「行き先は誰が決めたの?」
電車の中で樹音は徹に尋ねた。

「俺だよ。だってお前、アトラクションとか苦手だし、人混みも苦手だから遊園地とかテーマパークは無理だろ。車酔いするからドライブも無理だしな」
「……うん」
さすがだ。付き合いが長いだけに徹はよくわかってるな、と樹音は感心していた。
無理な頼みごとをした手前、これ以上負担をかけることは出来ないと思ったのだろうか。徹らしい。

徹とは同じクラスになった高三からの付き合いだった。付き合いと言っても、友人としての付き合いだけれど……。
それから同じ大学に進学して更に仲が深まったが、友人から親友に昇格しただけのことだった。

徹は昔から容姿も性格も良かったのだが、何故か女子ウケが悪いようで、少なくともここ二年程は彼女がいない。
見る目がない女子が多いのか、それとも樹音の惚れた欲目だろうか。



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