一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
六十秒の甘え
ひと夏の……とは、よくいうけれど、他の季節ではこういった言葉を聞かない。

夏は特別なものなんだろうか。

とくに、二十歳の夏は。




クロエさんの運転で、海に向かった。
顔色もあまり良くないし、寝ていても構わないというクロエさんの言葉に甘えて、車の中では寝させてもらった。

考え事をしたくないから、寝ていたかった。



―――茉莉香が、彼氏と泊まりに行く。


二十歳のカップルの泊まりとは、セックスを含んでいるだろう。
もちろん絶対ではないし、義務でも何でもない。

だけど………そういった意味をまったく、微塵も含まずに、彼女に泊まりを誘う男がいるんだろうか。
茉莉香も、俺に相談するという事は、そうなる事を想定している筈だ。

何を言ったら良いかわからなくて、まだ返信は返せていない。


せっかく塞がってきたものを、たった一通のメッセージが一瞬で切り裂く。


何も言わないで欲しかった………。


だけど、偶然どこかで会って、いきなり事後報告を受けるよりは良かった。
そんな事をされたら、きっと全身が凍り付いてしまって、正しいリアクションが出来ない。
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