一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
ホテルにチェックインすると、クロエさんは撮影の下見に出掛けた。

撮影したいのは夕方と明日の朝らしい。
だから撮影と言っても一日中忙(せわ)しいわけではなく、ゆっくりと出来る。

「半分は、ただの羽根伸ばしだから」とクロエさんは言った。



律さんが手配してくれたホテルの一室は、丁度いい広さだった。

今の自分には、広すぎる空間も、圧迫された空間も、どちらも息苦しい。

広すぎる空間は独りを実感させ、圧迫された空間は自分を押しつぶす。


ナチュラルモダンなスタイルの客室だった事も、良かった。
華美なインテリアも、シックなインテリアも、今は圧倒されてしまいそうで……。


ふとテーブルに目をやると、秋の宿泊プランの案内が置かれていた。

きっと茉莉香の彼氏は、オフシーズンで予約が取りやすく、少しでも人の少ない時期を選んで茉莉香を誘ったのだろう。
人混みが苦手な茉莉香を思っての配慮もあるのかもしれない。


8月が、終わってしまう。

来月から、自分は………どうしよう。


元の生活に戻るだけ。

そんな事は、わかってる。
他に選択肢なんてない。


だけど……クロエさんと、ちぃちゃんとの生活に慣れてしまった。
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