一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
だけど俺とクロエさんの場合は、そういうメッセージのやり取りで盛り上がって、「じゃあ、久しぶりに会おうか」となる事は想像出来ない。

かといって、自分から「クロエさん、久しぶりに会いませんか?」というのも……出来ない。
そんな事は出来そうにない。


クロエさんは俺と違って、割り切る事が上手そうに見える。
契約が終わったら、気持ちをすぐに切り替えられそうだ。

部屋を片付けて、シーツを洗って。
俺がいた事はなかったかの様な、元のゲストルームに戻るだろう。

もしかしたら違う人が来るかもしれない。
カイトさんに似た人さえいたら………。


ちぃちゃんは、覚えていてくれるかな。
これからも、あのぬいぐるみで遊んでくれるかな。



―――独りに戻りたくない。


今まで通りの生活に戻るだけなのに。
どうして独りに戻る、なんて思ってしまうんだろう。



それじゃあ今は?


独りじゃないなら、今は?





距離を、うまく取れていなかったのかもしれない。



これじゃあ依存しているみたいだ。

ちぃちゃんに、今の暮らしに………クロエさんに。



居心地が良過ぎた。

忘れる準備をしなきゃ。



大丈夫。
きっとこういう事は、得意だから。
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