一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
気付くとベッドで眠ってしまい、クロエさんからの着信音で目が覚めた。
「もしもし。ごめんなさい、いま起きました」
「……また謝ってる」
「すいません……」
「……ほら、また。
いまアオイの部屋の前にいるんだけど」
「あ、開けますね」
スマホを切って、すぐにドアを開けた。
クロエさんとスマホで話し、こうしてホテルで顔を合わせるのは少し変な感じがする。
「まだ少し顔色悪い」
そう言ってクロエさんは額に掌をかざした。
クロエさんの手はいつも通り、ひんやりとしている。
あと何回、この手に触れられるんだろう。
「熱はないね」
「大丈夫です、よく寝たんで。
お昼ご飯、食べに行きましょう」
「ルームサービスにしても……」
「外の空気吸いたいし、大丈夫です」
それならという事で、ホテルからあまり離れていないお店で、少し遅い昼食を取ることにした。
風通しの良い真っ白なテラス席に案内してもらうと、そこからは海がよく見えた。
潮風を肌と香りで感じ、絵葉書みたいな景色を眺めていると、自分がここにいる事がとても不思議な事に思えた。
予定していた夏休みとは、まったく違う夏休みを過ごしている。
あの日、茉莉香達に会わなかったら、バイトがドタキャンされなかったら、あのバーに行かなかったら。
今、ここにはいなかった。
「もしもし。ごめんなさい、いま起きました」
「……また謝ってる」
「すいません……」
「……ほら、また。
いまアオイの部屋の前にいるんだけど」
「あ、開けますね」
スマホを切って、すぐにドアを開けた。
クロエさんとスマホで話し、こうしてホテルで顔を合わせるのは少し変な感じがする。
「まだ少し顔色悪い」
そう言ってクロエさんは額に掌をかざした。
クロエさんの手はいつも通り、ひんやりとしている。
あと何回、この手に触れられるんだろう。
「熱はないね」
「大丈夫です、よく寝たんで。
お昼ご飯、食べに行きましょう」
「ルームサービスにしても……」
「外の空気吸いたいし、大丈夫です」
それならという事で、ホテルからあまり離れていないお店で、少し遅い昼食を取ることにした。
風通しの良い真っ白なテラス席に案内してもらうと、そこからは海がよく見えた。
潮風を肌と香りで感じ、絵葉書みたいな景色を眺めていると、自分がここにいる事がとても不思議な事に思えた。
予定していた夏休みとは、まったく違う夏休みを過ごしている。
あの日、茉莉香達に会わなかったら、バイトがドタキャンされなかったら、あのバーに行かなかったら。
今、ここにはいなかった。