一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
そのままホテルに戻り、客室へと向かった。

長い筈の廊下が、とても短く感じる。
もっと続けば良いのに。

カードキーを通すと、接触が悪いのか鍵が開かない。
見兼ねたクロエさんが代わりにカードキーを通すと、すぐに鍵は開いた。

「ありがとうございます」

「……これくらいしか出来ないから」

「これくらい?」

「ヒメだったら、話を聞いて良いアドバイスが出来る。
ナナだったら、きっと笑わせる事が出来る」

自分には何も出来ないから、と言う様にクロエさんは背を向けた。

―――クロエさんが、自分の部屋に行ってしまう。

そう思うと咄嗟に手が伸びて、白いシャツの裾を掴んでいた。



「……アドバイスは、いりません。
笑わせて欲しいとも思っていません。
だけど…もし、良かったら……」

用意していなかった言葉が、勝手に口から出る。
お願いだから、振り向いて欲しい。

「……もし、良かったら?」

クロエさんはそう言って、振り向いた。
その眼にはちゃんと自分が映っていた。

「もし、良かったら……部屋に、来てもらえませんか」

一瞬だけ目を見開いてから、クロエさんは小さく頷いた。
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