一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
何かに似ていると思ったら、自分が熱で寝込んでいる時に、母親が横で寄り添っている時と同じだった。
すぐ隣の椅子に座って、見守る様にこちらを見つめる。
手を伸ばせば、すぐに触れられる距離。
……だけど、母から見守られる対象は自分じゃなくなった。
昔を思い出していると、またさっきの様に口が勝手に動いた。
「―――母が、再婚をしたんです」
「……うん」
突然話し出した事に動揺もせず、クロエさんはただ相槌を打つ。
「そうしたら……再婚で出来た妹は、よく熱を出したんです。
母は仕事を休んで、妹に付きっきりで…。
それを見て、自分も熱を出したいと思っても、もちろん熱なんて都合よく出なくて。
家族から、良かった、アオイはいつも元気で、って言われて。
本当に熱が出ても、言えなかった。
倒れてから熱を知った母は、どうして言わなかったの、もっと早く言ってたら、って……」
悪気がなかったのは、わかってる。
心配から、つい出てしまった言葉だったんだと。
だけどそれでも、違う言葉が欲しかった。
視界がじわじわと滲み、顔を両手で顔を覆うと、クロエさんはその手に自分の手を重ねた。
すぐ隣の椅子に座って、見守る様にこちらを見つめる。
手を伸ばせば、すぐに触れられる距離。
……だけど、母から見守られる対象は自分じゃなくなった。
昔を思い出していると、またさっきの様に口が勝手に動いた。
「―――母が、再婚をしたんです」
「……うん」
突然話し出した事に動揺もせず、クロエさんはただ相槌を打つ。
「そうしたら……再婚で出来た妹は、よく熱を出したんです。
母は仕事を休んで、妹に付きっきりで…。
それを見て、自分も熱を出したいと思っても、もちろん熱なんて都合よく出なくて。
家族から、良かった、アオイはいつも元気で、って言われて。
本当に熱が出ても、言えなかった。
倒れてから熱を知った母は、どうして言わなかったの、もっと早く言ってたら、って……」
悪気がなかったのは、わかってる。
心配から、つい出てしまった言葉だったんだと。
だけどそれでも、違う言葉が欲しかった。
視界がじわじわと滲み、顔を両手で顔を覆うと、クロエさんはその手に自分の手を重ねた。