一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
忘れなきゃとか、もう考えるのはよそう。
そんな事を考える時間がもったいない。

思い出は、忘れようとか、忘れなきゃとか、そういうものじゃないから。



「クロエさん…ありがとうございます」

「……何もしてない」

クロエさんが寝転び、体温が離れていく。
白いシーツに、白いシャツを着たクロエさんが綺麗に混ざり合う。

「してますよ」

「アオイが話してくれただけで、何もしてない」

「充分してます。
初めて、こんなに話しました……。
なんだか、すっきりしました」

クロエさんは背を向けると、身体を丸めた。
オーバーサイズのシャツからは、ちょこんと指先が除いている。

「………話すと、変わるもの?」

「はい。話したら、軽くなりました」


―――クロエさんも、もし何か話したい事があったら話してください。


そんな風に、言えたら良いのに。

そんな事は言えない。

クロエさんはきっと……自分に話したりはしない。



「………オレも……話してみても、いい?」



自分の耳を疑った。
だけど、聞き間違いじゃない。
< 145 / 186 >

この作品をシェア

pagetop