一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「……もちろん」

「話すの、上手くないけど」

「上手くなくて、いいです。
クロエさんの言葉で言ってもらえれば………」

そう答えると、クロエさんはぽつり、ぽつりと話し出した。



「オレの家って……少し、複雑で。
今は、もう慣れたから平気だけど。

10代の頃は早く人生が終われば良いって、いつもぼんやり思ってた。
この先、何が起こるんだろうと思うと…眠れなくなったり。

だから、人生を早送りして……終わりにしたいと思った。

気持ち悪いね、こんな話」

「そんな事ないです」

気持ち悪いとは、思わなかった。
自分も、そんな風に考えた事は何度もあったから。

死にたいわけじゃないけれど、期待や希望よりも恐怖が勝った。

こんな風にハラハラと生きるより、早送りをするか、結末を先に知って心の準備をしたいと願った。
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