一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
明け方に目を覚ますと、クロエさんの小さな頭が腕の中にあった。
ぐっすり眠ってしまい、すっかり一緒に眠っていた事を忘れていた。
作り物みたいに綺麗な輪郭を、なぞりたくなる。
髪を撫でると、クロエさんの睫毛が揺れた。
「すいません、起こしちゃいましたね」
「……すごく久しぶりに、こんなに寝た」
クロエさんが振り返り、目が合う。
ぼんやりとしているクロエさんは、どこか幼く見える。
まだこうしてベッドにいたいと思ったけれど、朝方に撮影する事を思い出した。
「クロエさん。撮影に行きましょう」
「うん……じゃあ、準備…する」
覚束ない足取りで、クロエさんは自分の部屋へと戻った。
さっきまで横になっていたベッドのシーツは、しっかり2人分の皺が出来ている。
その皺に触れ、昨夜の事を思い出すと顔が熱くなっていった。
年上の男性を、あんな風に抱き締めるなんて思わなかった。
やっぱりクロエさんは、人をおかしくさせる。
カイトさんの話をしてくるとは思わなかった。
それに、家の話も。
クロエさんの話では、わからない部分もたくさんあったけれど、それでいい。
全部を話して欲しいとは思わない。
クロエさんが話したい事を、話したいペースで話してくれれば良い。
昨夜の会話は、普段の会話の3日分以上の情報量だった。
それに腕の中のクロエさんは、とても近くに感じる事が出来たから。