一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
律さんおすすめだというホラー映画は、最初はあまり頭に入ってこなかった。
クロエさんの事ばかり考えてしまって。

だけど、後で姫野さんに感想を聞かれた時に何も言えないのもまずい。
そう思って、どうにか映画に意識を集中させた。


その映画は、怖さを売りにしているものではなく、恋愛も絡んでいる悲しいストーリーだった。
なんてタイミングが悪いんだろう。
ただ怖いだけのストーリーだったら良かったのに……。



「アオイちゃん、付き合ってくれてありがとう。
そんなに怖くはなかったね。
もっとグロテスクな映画かと思ってた」

「そうですね。
それにしても……どうして、恋愛って…こうなんでしょうね」

「こう、って?」

姫野さんがライムを抱きながら聞いた。
その姿を見たレモンは、他の部屋へと行ってしまう。

「誰かが誰かを好きになれば、その時点で別の誰かは失恋したようなもので、哀しい思いをするってことなんですよね…。
両想いなら、本人達は幸せになれるけど……。
その二人のどちらかを好きだった人達は全員、失恋するわけで…」

二人の人間は笑顔になって、他の人は全員、ただ哀しむ。
それは仕方がない事だけれど……。

自分はずっと、哀しむ側でいるのかもしれない。

「確かにそうだね。
でも、片思いしてた側も…ある意味では幸せじゃないかな」

「ある意味では?」

「好きになれる人がいるって、僕はすごいことだと思うよ。
苦しかったり、哀しかったりもするだろうけど、僕は誰かを好きになれる事が嬉しい。
例えば……アオイちゃんが、クロエくんを好きでもね」

「え?」

姫野さんはにっこりと微笑んだ。
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