一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「じゃあアオイちゃん、これは兄としてのアドバイス」

「アドバイス?」

「もし何か思っているなら、ちゃんと本人に話して。
本人に聞いたり、話したりもしないで、一人で全部を決め込んでしまわないで」

姫野さんは、クロエさんに(・・・・・・)とは言わなかった。

本当は……出来る事なら、クロエさんと話をしたい。
このまま夏が終わって、何もなかった様には別れたくない。

姫野さんみたいに、素直になれたら良いのに……。


「どうしたら、姫野さんみたいになれますか?
怖くて、何も聞けないし…言えない……」

ごめんなさい、と言ったばかりの姫野さんに、言うべき事じゃなかった。

だけど、姫野さんは嫌な顔をしなかった。

「一人で考えて、いろいろと決め込んでしまう方が、僕は怖いと思うよ。
もしかしたら、それは相手の気持ちを無視している事と同じかもしれない」

「無視……」

「うん。人の気持ちは、本人にしかわからないから。
もし……何かあって傷付いたりしたら、いつでもここに来て。
コーヒー用意して、ライムとレモンとアオイちゃんの事、待ってるから」


頭をまた何度か撫でると、姫野さんは家に帰るように言った。

本人とちゃんと向き合って話すように、と。
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