一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
クロエさんは短い溜息を吐いて、顔を上げた。
その表情は、暗いものではなかった。

「とにかく、イギリスに行かない事とカイトは関係ない」

「じゃあ、なんで行かないんですか……」

「アオイがいるから」

その言葉の本当の意味はわかってる。
アオイなんかじゃない。

カイトさんの身体に似たアオイ、なんだと。

「そんな狡い言い方、しないでください。
カイトさんに似た……って、ちゃんと付けて言ってください」

「……なにそれ」

クロエさんが少し眉を寄せる。
だけど今、言わなかったらきっと後悔する。

「カイトさんはいなくても、カイトさんに似た身体を抱ければ……良いんですか?」

「どうしてそうなるの」

「だって……クロエさんとはそういう…契約じゃないですか。
クロエさんが好きだから…カイトさんの代わりでも良いと思ったけど……。
やっぱり、そんな風には割り切れない……」

一つ、二つと涙が零れ落ちて、握りしめた手の上で跳ねては散る。
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