一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
ゆっくりと唇を離すと、クロエさんは眼を細めた。

「つまりアオイは、オレがただ抱いたと思ってたんだね」

「そう、ですね…てっきり……」

クロエさんにしてみたら良い気はしないだろうけど、確かにそう思っていた。

「汗かくの好きじゃないって、言ったよね。
なんの気持ちもない相手に、わざわざ汗をかくような事はしない」

「そんな……むちゃくちゃな……。
クロエさんは言葉が…足らないというか、少な過ぎるというか…。
それに離れでだって、カイトって言って…ああいう事をしたから……」

「……カイトって、口にしてた?」

「はい、一度ですけど…」

「ごめん……。
確かに、アオイとカイトを……重ねてた時もあった。
でも、全部が全部っていうわけじゃなくて…」

そう言うと、クロエさんは急に首筋に唇を押し当てた。
思わず声を漏らしてしまうと、クロエさんは小さく微笑んだ。

「ソファーとベッド、どっち?」

「ソファーと……ベッド………」

いつもの主語のない質問。
だけど、その主語はわかる。

「あの夜をやり直さなきゃ。ソファーとベッド、どっち?」

「今、から……?」

「そう。後悔してるから、早くやり直したい。
あと、言葉が少ないって言われたから、今日は全部ちゃんと言葉にするから」

「全部?」

「どう触れたら良いかも、どこが気持ち良いかも、全部アオイに聞くから」

「あれは、そういう意味じゃなくて……」

「ちゃんと全部、答えてね」


意地悪く笑うと、クロエさんは身体を重ね、唇を落とした。

やっぱりクロエさんは、とてもとても………狡い。
< 180 / 186 >

この作品をシェア

pagetop