一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
さっき窓から外を覗いだ時、外は暗かったけれど今は何時なんだろう。


キャリーケースを受け取った時、一緒にスマホも渡されたけど、時間も通知も何も確認せずに仕舞った。
こんなにスマホを触らない日は、今までにあっただろうか。


これまで何度も、これ以上、自分が傷つく前に茉莉香と距離を置こうと思ったし、そうするのに適したタイミングもあった。

違うクラスになった時、部活が忙しかった時、進学した時。

さりげなく、茉莉香に気付かれずに距離を置く事は出来た。
だけど、ずっと出来なかった。

周りからはいつも「茉莉香はアオイにべったりだね」と、言われてきた。

でも実際はそうじゃない。

俺の想いの方が遥かに重く、深く、べったりとこびり付いて、茉莉香から離れようとしなかった。


茉莉香は俺以外の友達がいないわけじゃない。

小動物みたいにちょこまか動いて、どちらかというと控えめで、押しに弱い。
でも俺が名前や見た目でからかわれている所を見ると、止めに入ってきた。
好きな人にバレンタインチョコを渡す勇気はなくても、そういう勇気は持っているような子。


俺がそばにいるから他の子は遠慮しているだけで、自分が少しでも離れたら、誰かにポジションを奪われるんじゃないのか。

あっという間に自分たちの繋がりはゼロになるんじゃないのか。


そう考えると、怖かった。



そうやってズルズルしてきて、結局、茉莉香に彼氏が出来てから理由をつけては会う回数を減らした。

そんな時でも、なんだかんだスマホは手放せなかった。

今日は茉莉香から連絡がくるか、こないか。
そう考えない日はなかった。

やっぱりどこかで繋がっていたかったのかもしれない。
どうせ会おうと誘われたって、断るくせに……。


スマホがない時代に生まれていたら、俺の茉莉香への執着の形も違っていたんだろうか。
< 27 / 186 >

この作品をシェア

pagetop