一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
長い階段を降りてから、どの部屋に行ったら良いのか聞いていなかった事に気がついた。
勝手にドアを開けて確かめていくわけにもいかないし、どうしようかと困っていると、ちぃちゃんが「やれやれ」という顔をしてやってきた。

ちぃちゃんの後をついていくと、少し開いたドアから明かりが漏れていた。

「し、失礼します……」

ためらいながらドアを開けると、そこはリビング・ダイニングルームだった。
ヴィンテージ家具に、幾何学的(きかがくてき)なデザインのアイアン製のライト。
天井には、プロペラみたいに大きなシーリングファン。
オレンジの照明で照らされる、暖かみのある色をしたダイニングテーブル。
奥にはアイランド型キッチンがあり、クロエさんが立っていた。

「シャワー…さっきは、ありがとうございました」

「うん。そこ、座って」

心のなかでは、シャワーと髪を乾かしてくれて(・・・・・・・・・・)、ありがとうございました、と言った。
でも、まるで自分が子どもみたいで、口には出さなかった。


言われたとおり椅子に座ると、シルエットの綺麗な椅子は座り心地も良かった。
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