一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「ハンカチ、ありがとうございます」

真っ直ぐにクロエさんを見てお礼を言った。
泣いた後の顔なんて人に見せたくないけど、もう今更、隠しても仕方がない。
それに、お礼はちゃんと顔を見て言いたかった。



「どう、されたい?」


「……え?」


「どうしたらいいか、わからなくて」


クロエさんが視線を落とすと、色素の薄い睫毛が小さく揺れた。


「いや、あの……本当に大丈夫です。
本当に気にしないでください。
泣いたりして本当に、ごめんなさい」

本当に、を3回も言ってしまった自分に呆れる。


言い訳にしかならないけど、と前置きをすると、クロエさんは細い指と指を絡ませた。

その姿は懺悔みたいに見えた。


「さっき、やり過ぎた。
"こんな"とか、"つまらない身体"とか……。
言わないで欲しかっただけなんだ」

「……それは、どうして…ですか?」

なんとなく聞いてはいけない気がしたけれど、聞かずにいられなかった。


「――――同じ、だから」


「同じって?」


クロエさんは泣き出しそうな、壊れそうな顔で笑うだけで、答えは返ってこなかった。
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