一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「そういえばアオイちゃん、Webデザインやってるんだよね?
僕の仕事もWeb関係で、今はディレション側になってきてるけど元々はデザイナーだったんだ。
役に立つかわからないけど、何かWeb関係で困った事とかあったら声掛けて」

自由な社風なのか、姫野さんの髪はシルバーアッシュに染められていた。
軽く立てられたシルバーアッシュの髪は、柔らかな笑顔とは対照的だった。

廊下を歩きながら横目で確認すると、やっぱり姫野さんは自分よりも10cmぐらい背が高い。

「姫野さんはモデルとかは……」

「ええ?まさか、ないない。
僕はただ背が高いだけ。
これから来る、(りつ)くんの方がモデルみたいだよ。
フローリストだけど」

「フローリスト?」

「いわゆる、お花屋さん。
花屋の花って呼ばれてるんだよ、律くん」

「花屋の、花……ですか?」

「会えばすぐにわかるよ」

花屋の花、とは……。
そう思いながらドアを開くと、部屋の中は昨夜クロエさんが作ったカレーの香りで包まれていた。

襟ぐりの広いTシャツに、髪の色と同じ黄色と緑のタイダイのサルエルパンツを合わせるクロエさんは、いつもよりリラックスモードだった。

「いらっしゃい、ヒメ」

「お邪魔してまーす。
すごく良い香り。さすがだね」

クロエさんは姫野さんをヒメと呼んだ。
ギャップがあると言えばあるけれど、姫野さんの雰囲気には合っている気もする。
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