一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「まずは上がらせてもらおうぜ。
クロエー、上がるぞー。
聞こえてないだろうけどー」

容姿とは不釣り合いな言葉遣いでそう叫ぶと、律さんはそのままキッチンへと向かって行った。
律さんはナミさんのバッグや荷物を両手いっぱいに持っているのに歩くのが早く、俺と七星さん達は少し駆け足になる。
花屋は体力が必須だと聞いた事があるけれど、こういう事か。





「よぉ、ヒメ」

「久しぶりだね、律くん。
七海さんもいらっしゃい。
って、僕の家じゃないけど」

キッチンで軽く挨拶を交わすと、律さんは持ってきた大きなタッパーを出した。
なかには大量の餃子が入っていて、七星さんも朝から律さん達の家に行って作ったらしい。
七海さんは、律が乱暴に包むから何枚も皮を破いてしまって、急いでスーパーに買い足しに行くはめになった、と口を尖らせた。

「俺は餃子は焼くのが専門なんだよ。
包むなんてチマチマチマチマした事、やってられるか」

「確かに律さん、餃子焼くのうまいっスよね」

「おい、ナナ。いつになったら俺の事をお義兄さんって呼ぶんだよ」

「律くん、ナナくんをあまり虐めないでよ」

「ヒメは甘いんだよ、ナナに」

昨日までは二人と一匹だった空間が、今日はまるで違って見える。
クロエさんの友達は想像していたよりも賑やかだ。
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