一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「ライム、レモン。もうちょっと静かにしようね。
アオイちゃんごめんね、にぎやか過ぎるでしょ」
「猫好きなんで、むしろ嬉しいです」
姫野さんがにぎやかと言ったのは弟と妹ではなく、二匹の猫達だった。
毛色がグレーのライムに、ブラウンのレモン。
二匹とも警戒心がまったくなく、家に入った途端に全力で身体をすり寄せ、喉を鳴らした。
「お仕事しながら二匹飼うって、大変じゃないですか?」
「繁忙期なんかは、ちょっとね。
でも僕には一人で暮らすの向いてないみたいだから、丁度良い。
誰かを見てる方が落ち着くし、家に帰って一人なのも自分には合わなかったから」
お兄ちゃんをするのが染みついているんだな。
自分は新しい家族に好かれようと考えた上で、良いお兄ちゃんになろうとしてきた。
だけど、姫野さんは作り物のお兄ちゃんじゃない。
「ライムとレモンって、かわいい名前ですね」
「好きな小説の中でね、主人公が飼ってる猫がライムとレモンって名前で。
そこから名付けたんだ」
「……それってもしかして、露木國彦先生のミルクとワンピースって小説ですか?」
「うん、その小説。アオイちゃんも読んだの?」
「露木先生の作品の中で、一番好きです」
「僕も一番好き。
ナナくんにも貸したんだけど、ラストが悲しすぎて嫌だって、涙目で言ってた。
本当、ナナくんってかわいいよね」
姫野さんは、七星さんとは違う意味で話しやすかった。
七星さんは天真爛漫な弟で、姫野さんは優しい近所のお兄さんという感じがした。
昨日会ったばかりの自分にも、とても柔らかくオープンに笑う。
なんとなく、幸せになるのが上手そうな人に見えた。
アオイちゃんごめんね、にぎやか過ぎるでしょ」
「猫好きなんで、むしろ嬉しいです」
姫野さんがにぎやかと言ったのは弟と妹ではなく、二匹の猫達だった。
毛色がグレーのライムに、ブラウンのレモン。
二匹とも警戒心がまったくなく、家に入った途端に全力で身体をすり寄せ、喉を鳴らした。
「お仕事しながら二匹飼うって、大変じゃないですか?」
「繁忙期なんかは、ちょっとね。
でも僕には一人で暮らすの向いてないみたいだから、丁度良い。
誰かを見てる方が落ち着くし、家に帰って一人なのも自分には合わなかったから」
お兄ちゃんをするのが染みついているんだな。
自分は新しい家族に好かれようと考えた上で、良いお兄ちゃんになろうとしてきた。
だけど、姫野さんは作り物のお兄ちゃんじゃない。
「ライムとレモンって、かわいい名前ですね」
「好きな小説の中でね、主人公が飼ってる猫がライムとレモンって名前で。
そこから名付けたんだ」
「……それってもしかして、露木國彦先生のミルクとワンピースって小説ですか?」
「うん、その小説。アオイちゃんも読んだの?」
「露木先生の作品の中で、一番好きです」
「僕も一番好き。
ナナくんにも貸したんだけど、ラストが悲しすぎて嫌だって、涙目で言ってた。
本当、ナナくんってかわいいよね」
姫野さんは、七星さんとは違う意味で話しやすかった。
七星さんは天真爛漫な弟で、姫野さんは優しい近所のお兄さんという感じがした。
昨日会ったばかりの自分にも、とても柔らかくオープンに笑う。
なんとなく、幸せになるのが上手そうな人に見えた。