if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
私は義母に支えられながらやっと救急車に乗れた
私は医師ではなく、今は幼い頃に母を亡くしたあの時に戻っていた。
私たちの勤める大学病院の救急センターへ緊急搬送された父は呼吸停止の状態であったけど、心臓はかすかに動いていた。
俊が救急車の中で気管内挿管をしていたので、人工呼吸器をつけたまま、CAG(冠動脈撮影)を行う事が出来た。治療を施し、まだ予断の許す状況ではなかったが、何とか助かった。
CCU(冠状動脈疾患管理室) で人工呼吸器をつけて、意識のない父の顔を見て涙が出た。義母が私の背中をそっとさすってくれる。
「パパはいつも私の事なんて気にもかけていなかったのに」
私がそう呟くと義母が言った
「薫さん、それは違うわ。お父様はあなたをとっても大事にされているのよ。あなたが家を出てマンションで一人暮らしするって言った時、どんなに心配していたか。何度も私に ”薫は何をしてるだろう?”って聞いてきたし、それに何度もあなたのマンションには足を運んだのよ」
そう話す義母の顔を見ると、柔らかい微笑みを向けながら何度も頷いた。
「それにね、あなたが医師の国家資格とる時期なんか、とっても大変だったのよ。試験の日は朝からずっと落ち着いてくれなくて、舞子の言葉も聞こえなくてね。発表の日なんて、早朝から新聞を自ら玄関まで取りに行って、新聞であなたの名前をみつけて喜んでいたわ。」
「そんな事が、、」
「あなたが女子大病院に残って循環器を選んだときなんか、もう大変だったわ。”ほらッ・・薫はやっぱり私の子だろ!見る目がある”って喜ばれて。知ってました?女子大の中田さん、あなたの上司にあたる方に、何度も何度も頭を下げて、娘を宜しくお願いしますって・・・」
「・・・パパが人に頭を下げたの?」
「けして、あなたの事を気にかけていなかったんじゃありません。普通以上に、あなたを愛しておいでですよ。いつも、あなたの幸せを願っていましたもの」
「何で・・でもあんな事を彼に」
「・・・きっと、わかっておられると思いますよ。彼、片瀬さんでしたね、彼の真っ直ぐな目をみればわかりますよ。でもね、お父様、あなたが心配だし、騙されているのだと思ったら、仕方なかったんでしょうね」
「・・・・」
「娘が好きな男性を連れて来て、嬉しいっていう父親なんていませんよ」