if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
『・・・寒くない?』
「大丈夫」
『・・・お腹空かない?』
「空いてない」
『喉は渇いてない?』
「いいえ、・・私に気を使ってる?」
『だって、君は僕に何も要求なんてしないから。そうだろ?』
彼のそう言った顔をみつめて、さっき父に殴られて切れた唇が目についた。
そっと俊の唇に触れてみる。
『・・ん?・・・何?』
「切れてるの、さっき、父に殴られて・・痛かったでしょ?」
『いいや、そんなことはないよ。アレはきっとね、洗礼だって思うから・・』
「洗礼?」
『うん、いつかは、お父さんが僕を認めてくれるための洗礼だよ。これからもずっと・・君を愛してるから』
俊が私を抱きしめてくれる。私は俊の大きなぬくもりの中で、小さな不安を抱えていた。