if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

母さんは、薫の持って来た食材の沢山入った袋を見て、ふたりだけの外出をやめたようだ。薫が遠慮して帰ろうとすると、ほぼ無理矢理に部屋に招き入れた。
薫も母さんも初対面でかなり緊張しているのか、無言の状態なんだけど。


「あの・・いつもウチの俊ちゃんがお世話になってまして」
「えッ、あの、そんな・・ はじめまして、大澤薫と申します。俊さんとは 同じ病院で勤務しています」
「そう、看護師さん?」
「いいえ、その同じ職業なんです」
「まぁ、お医者様なの?女医さんか~カッコイイわぁ~!? それで俊ちゃんとはいつからのお付き合い?」

ヤバい、母さんのスイッチの音がした。僕は慌てて薫を連れ出そうとする。

『母さん!何だよッ、そんなのどうでもイイだろ?!薫、外に行こうか!?』
「ええ~ッ!何でよ~!お母さんは仲間ハズレなの?!」

母さんの言った”仲間ハズレ”の言葉に、とっても反応して笑いが止まらない薫はその後、母さんと意気投合して色んな話をしていた。僕に聞こえないように、僕の仕事中の様子までコソコソと話してるんだ。

薫が母さんに思いっきり笑わせてもらってる。笑顔をみたのは久しぶりだったかもしれない。
お父さんがあんな風に倒れてから、彼女も通常業務をこなしながら父親の看病に、妹の面倒までみるために実家に行くって頑張っていた。
お父さん、少しだけイイ兆しがみえているんだけど、あと一歩なんだ。 心配していた他の合併症の症状もなくてこのまま意識が戻れば、再起も期待できるし。

ふたりでキッチンに立つと 並んで野菜を洗ってる。
薫が買って来た食材を使って、ふたりで僕の好物を作ってくれるんだそうだ
”材料を切って後はお鍋に入れるだけの すき焼きだけど・・”


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