if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

月曜日には、朗報は突然に訪れた。
薫のお父さん、いや、大澤学長が意識を取り戻したと連絡があった。すぐに病室に顔を出すと、ベットに横になり目を閉じている学長に声をかけた。

『大澤学長、わかりますか?』

その声に、目を開きジッと僕を見てくる。

『やっと戻って来てくれましたね、10日間も意識が戻らず焦りましたよ。
でも良かったです』
「君が僕を助けたんだって・・看護師から聞いたよ」

少し掠れた声だけど、しっかりと声が出ている事に安堵する。

『お話もしっかり出来ていますね、先生、視覚に問題はないですか?』
「ああ、嫌な男の顔がちゃんと見えるよ」
『あ、そうですか・・それは良かった。 薫さんにはお会いしましたか?』
「・・・いや、まだ来ない。別にいい」


僕は傍にいる看護師に薫先生を呼ぶように伝えたが、何処をさがしても、みつからないと言ってくる。

金曜日の夜にうちの母親と食事をして、週末は連絡がなかった。でも繋がらないなんて そんなはずはないだろうと、自分のスマホから電話をしたが、電源が入っていないとメッセージだけ聞こえてくる。不思議に思ったが、その時はそのうち泣きながら現れて、思いっきり抱きしめてあげようって思っていた。
なのに、薫の姿はその日を境に忽然と消えた。

まるで、いなかった人のように・・・
医局の机の上も、中も何もかもが整理されていた。
自分の担当する患者のリスト表にカルテ内にはサマリーまではさまれていた

これは、消えるために、自らが取った行動だってわかる。無理矢理、患者のサマリーなんか書かない。


僕は焦った 僕に黙って 薫、何処へ行った?!
どうして?・・・・どうして 姿を消すんだ?
彼女にいったい何が起きたって言うんだ!



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