if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
彼女の実家、大澤学長の自宅に約束の時間に向かった。
リビングに通され大澤学長が、僕の来るのを待っていてくれた。数ヶ月前に薫に連れられて来た日が昨日の事のように思えた。
『すみません、今頃になってしまって』
「いや、そんなことは気にしなくても良い。等々、アメリカ出発の日を決めたらしいじゃないか」
『はい、なかなか決心がつかなくて、申し訳ありませんでした』
大澤学長は眉尻を下げてから、皮肉っぽい表情になる。
「君は私に貸しがあるって思わないのかね」
『貸しですか?! まさか学長を助けたからですか?』
「うん・・まぁ、そうだなぁ」
『それは、医師としても人間としても使命といいますか、、それに助けた相手に一回一回貸しを作っていたら大変でしょ?何せ、覚えておけないですから・・』
「普通であれば、その貸しは最大限に活用するモノが多い世の中なのに、君はかなりの変わり者のようだ」
『そうですかね?』
「君には助けてもらってお礼も満足に言えなかった。薫の事がなければ、ちょっとは違った関係がこれからも築けていたかもしれない。 すまなかった。」
薫の名前が出て、すかさず顔が強張るのがわかる。
『薫さんはお元気でしょうか?』
「ん・・うん・・まぁ・・そこそこにな」
歯切れの悪い学長の返事に、今日の事を話して確認したかった。