if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
『実は、今日偶然に薫さんに会いました。それが産科の病院でしたが』
「片瀬君、薫に声をかけたのか?!」
慌てるように学長が身を乗り出し驚く。何度も会わせて欲しいと訴えても聞きいれて貰えなかったのだから、その反応は間違えていないが。
『すみません。本当は影から見ておこうって思っていたんです。何度、会いたいと伝えても断れていましたから。でも薫さんのお腹の膨らみを見て・・もしかしたら?なんて気持ちがあって』
暫くの沈黙のあと、「薫は・・その・・何と?」とそんな質問が帰って来る。
『はい?何がですか?』
「いや・・・その何も言わないのであれば・・イイ」
何か隠してる?学長の態度にそんな雰囲気を感じる
あからさまに話題を変えようとするのも気になる。
「そ、、それで、アメリカにはどれぐらい行ってみるつもりだ?」
『そうですね、できれば・・ずっと・・ですかね?』
「日本には戻らないと?」
『ええ・・僕を必要としてくれるのが アメリカなら・・それはそれで結構な事ですし日本の技術もまんざらじゃないって所、見せて来ますよ』
「今回のアメリカ行きはあちらの大学から君を名指ししてきたらしいからね、君はあっちでも技術を磨く事ができるだろう。何せ研究は最先端だな、そう言えば、UCLA大学のポーズン博士が君をかなり所望したそうだ。共同研究をしたいって私へのメイルも来ていたよ」
『ええ、数年前に2年ほど米国でポーズン博士にはお世話になりました。僕の念願でしたし嬉しいお誘いです。・・一時は・・それより大切なモノが見つかったんですけど、いつの間にか、僕の手の中から抜け落ちていたので・・』
「・・君はまだ、そんなに心残りなのか?」
『強がりを言えばもう、思い出に変えてもいいかなって言いたいですね』
僕のそんな自嘲気味な言葉に、学長が困った表情になる。
「そうか、薫には 君がもう一歩を歩きはじめた事を伝えよう。あの子も・・きっと 安心するだろうから。」
『学長?すでに薫さんを安心させてあげれる相手がいるのですよね、病院ではとっても大事そうにお腹の子を気遣ってて母親になっていた。薫さんはご主人に大事にされているんですよね?』
教授は俊に頷いてみせた
『そうですか・・本当に良かった』